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国語を考えてみる ああ、素晴らしき哉、日本語H 
文/学林舎国語顧問  森本 秀俊

 あけましておめでとうございます。2015年が始まって早くも半月以上が過ぎてしまいました。「光陰矢のごとし」ということわざ通り、月日の過ぎるのはとても速いですね。正月気分はあっという間にぬけてしまいました。
 私は子どものころ、正月の三が日が身もこがれるくらい好きでした。お年玉はもらえるし、友だちからくる年賀状は楽しみだし、テレビ番組は朝から晩までおもしろいし、料理はおいしいし、子どもなのに「赤玉ポートワイン」を飲ませてもらえるし……、とにかくいいことづくめだった記憶しかありません。最近の正月は、そのころの百分の一も楽しくないなあ、と感じてしまうのは、どうしてでしょうか。お年玉をもらう立場から出す立場になったのが悔しくて悔しくて……、などというせこい気持ちで言っているのではありません。昔は正月、特に元旦というのは本当に特別な一日であったような気がします。初詣に行ってもたいていの店は閉まっていて、みんなが「元旦を愛でなくては」という気持ちが強かったような気がします。しかし、最近は元旦から開いている店も多く、普段の日と何ら変わりないような雰囲気が街にただよっています。ハロウィンやクリスマスで大騒ぎするのもいいけど、日本人なんだから、正月をもっと愛しておくれよ、と感じるのは、私だけでしょうか。
 子どものころの正月での楽しみの一つに「百人一首」がありました。正月には近所に住んでいる親戚がうちに集まってきて、「新春恒例 森本杯争奪 大百人一首大会」が開かれました。その大会にはたいてい、6〜7人の参加者がありました。私も小学6年生くらいのころには、七十近い和歌を暗記していて、ひそかに優勝をねらっていました。しかし、上には上がいるもので、三つ年上の兄貴は九十近く暗記し、近所のおばちゃんにいたっては、おそらく百枚全部暗記していました。そのいきさつもあり、本命 おばちゃん 対抗 兄貴 穴 私 という予想がたてられ、その予想通りに、優勝はいつもおばちゃんか兄貴、私はたいてい三位に甘んじるという結果になりました。
 「むすめふさほせ」という言葉をご存知でしょうか? 百人一首には、上の句と下の句があります。

村雨の 露もまだひぬ まきの葉に   …上の句
    霧立ちのぼる 秋の夕暮れ   …下の句

 百人一首は、読み手が上の句をよんで、競技の参加者が下の句が書かれた札を取り合うというゲームであることはご存知だと思います。そして、上の句のある字がよまれたときに、下の句、つまり取り札が決まるという文字を「決まり字」といいます。「むすめふさほせ」というのは、その「決まり字」が一字であるという和歌です。つまり、読み手が「むらさめの」とよみ始めたとき、「む」と聞いただけで、「きりたちのぼる あきのゆふぐれ」という札が取れるというわけです。
 この「むすめふさほせ」のことを知った年に私は、親戚の前でいい格好するために、「む」が出た瞬間に「きりたちのぼる」を取ってやろうと、ずっとその札に集中していました。「む」、「むむ」、「むむむ」。しかし、その札はなかなか出てきません。「む」、「むむむ」。私の目の中にはもう「きりたちのぼる あきのゆふぐれ」の札しかはいっていませんでした。そして、やっと「む」が出たのが、残り十枚を切ったとき。「キタ―!」と心の中で叫び、手をのばした瞬間、札の近くにいたおばちゃんの手が、私の手の下にすっともぐりこみました。「さすが、○○おばちゃん」みんなから称賛され、にこにこ笑うおばちゃん。完璧に作戦ミスをおかした私は、その回はブービー賞に甘んじたのでした。
 日本の伝統文化が生み出した「百人一首」。このすばらしき遊びが復活することを信じています。
 ああ、素晴らしき哉、日本語。(つづく)




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