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新しい教育シーンをクリエイト



算数・数学から見えてくる世界 
文/学林舎算数・数学顧問  深見 和孝


 1か月程前のことですが、新聞にこんな内容の記事が載っていました。
 滋賀県の議会での話で、知事が「子どもたちに学ぶ力を身につけさせたい。」というような発言をしたところ、保守系の県議から反発の声が上がったそうです。県議いわく、「学力でいいんだ。」とのこと。知事の「学ぶ力」という言葉が気に入らなかったらしく、「学力」という言葉に訂正させたかったようです。傍から見れば「学ぶ力」と「学力」の違いなどどうでもいいように思えますが、新聞記事になるくらいですから、知事と県議の学校教育に対する考え方の対立を象徴しているのでしょう。記事によれば、滋賀県は全国学力テストの結果が思わしくなく、県議はテスト結果の向上を目指す方向性を「学力」という言葉で言い表したかったようです。県議にとって、学力テストの得点を上げることは県民のニーズであり、その道筋をつけることは政治家の重要な仕事であるわけです。対して、知事の方は、「小5の割合,中2の関数でつまずきが多い。」と、数学教師のような発言をされているくらいで、教育に関しての筋の通った持論をお持ちのように見受けられます。おそらく知事は、学ぶことを子どもが成長する過程を通して捉えたいのではないでしょうか。
 そういう意味では、「学力→テストの点数アップ」、「学ぶ力→子どもの成長」というイメージがあって、「学ぶ力」の方がもっともらしく見えますが、それで学ぶ力に軍配が上がるかというと、そう簡単にはいかないでしょう。たかだか「ぶ」が入っているかいないかだけの問題ですが、教育に対する向き合い方の違いは人それぞれあって、傍からみると面白いものです。たいていの人は自身が子どもの頃に学校で勉強した経験をもっているので、「勉強する子ども」のイメージが、自分の体験を通して心の中に投影されているのではないでしょうか。たとえば、勉強はガマンすること、自分を律することとみる人もいるでしょう。逆に、自身がガマンして勉強してきたので、子どもが楽しみながら勉強する姿に理想をみる人もいると思います。
 学校教育とは何かと問われて、生産性の高い労働者を育するための機関だとか、自立した近代的個人になるための養成システムと回答していては、身も蓋もありませんし、やっぱり教育は尊いものだと信じたい気分はあります。ですから、政治家の間で学力・学ぶ力論争が起こるというのは、とても好ましいことだと思います。むしろ、学校教育の方向性が1つに定まってしまうのは最悪です。政治家の方たちはスッキリした答えを求めがちですが、教育というのは、矛盾を抱えつつやっていくものであればよいと思いますし、矛盾があるがゆえに尊いものとみえるのではないでしょうか。最後に、ある先生と生徒との1コマです。

先生:テストの点数をとるために勉強するんじゃないよ。自分の興味のあるところから楽しんでやればいいよ。それが君の学ぶ力になるのさ。

生徒:わかったよ、先生。僕、がんばるよ。

先生:じゃあ、この前のテストを返すよ。・・・おい、何だ、この点数は!授業で教えたことをちゃんと家で復習していれば、こんな点数にはならないぞ。

生徒:でも、点数をとるための勉強じゃダメだから。

先生:何を言ってるんだ。勉強は復習が大事なんだ。毎日コツコツ勉強しなければ学力が身につかないだろう。

生徒:毎日家で勉強して、良い点数をとらなきゃだめなんだね。

先生:そうじゃない。点数をとるために勉強していてはダメなんだ。

生徒:じゃあ、点数が悪くてもいいじゃない。

先生:つべこべ言わずに、良い点数がとれるようにしっかり勉強しなさい。
                     
                         (つづく)




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