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国語を考えてみる ああ、素晴らしき哉、日本語M 
文/学林舎国語顧問  森本 秀俊


 前回は「気」という字を使った熟語を二字熟語から十一字熟語まで見てきました。今回は「気」という字を使った慣用句やことわざを見ていきましょう。
 「気が置けない」という言葉があります。私はいい歳になるまで、この言葉の意味をとりちがえていました。「気」を「置くこと」ができないのだから、「油断できない」「気を許すことができない」という悪い意味でとらえていたのです。ところが、ある時、ある方が私の身内に対して「○○さんは気が置けない人柄ですね」と言ったのです。私は「じぇじぇじぇ」と思いました(少し古くてすみません)。だって本人の目の前で「○○さんは油断できない奴だなあ」とけなしたと思ったからです。気になったので、その日、家に帰ると早速国語辞典を引いて意味を調べました。すると、「気が置けない」の本当の意味は、「遠慮したり気をつかったりする必要がなく心から打ち解けることができる」というものでした。「ほほお」と感心したことを今でも覚えています。
 「気もそぞろ」という言葉が好きですね。たとえば、男の友人同士が道を歩いています。一人が真剣な様子でもう一人に向かって、「人生というのは、結局は努力で何とでもなるんだよ。努力をおこたる者が、人生において敗者になることは必然の理なんだ」などとまくしたてている。ところがそのとき、前からとびきりの美人が歩いてきた。話をしているほうは自分の話に酔っているから美人の存在に気づかないが、聞かされている方はもう気持ちが完全にその美人に移っている。
 「なるほど」、「そうだね」などと相づちを打つものの、相手の話なんてほとんど心に入ってきていない。こういう状況を「気もそぞろ」といいますね。ユーモラスな言葉です。ちなみに「そぞろ」を使った別の言葉に「そぞろ歩き」というものがあります。「特にこれという目的もなく、ぶらぶらと歩き回る」という意味ですが、これも味わい深い言葉ですね。
 「気が気でない」という言葉は「心配で落ち着かない」という意味を表しますが、「心配で落ち着かない」と言うより、「気が気でない」と言ったほうがより切迫感が感じられます。

「今日は息子の入試発表の日で、
         心配で落ち着かないのよ」

「今日は息子の入試発表の日で、気が気でないのよ」


 前者は、「私の息子の学力からすれば、あの程度の学校は余裕よ、よゆう」という雰囲気がありますが、後者には「ここが最後の頼みの綱なの。神様でも仏様でも、天狗様でも何でもいいから、お願いだから合格させて」という切実な思いが感じられます。
 ふだんの生活の中で、「気」をつかった言葉ほど、多く使われている言葉はないのではないかと思います。
 「気がつかない」「気を悪くする」「気に喰わない」「気が早い」「気が重い」「気が合う」「気が利く」「気をつかう」「気がある」「気が晴れる」「気が進まない」「気が散る」「気を良くする」「気が乗る」「気が引ける」「気を配る」「気にかける」「気をもむ」「気に病む」「気を失う」「気を入れる」「気をまぎらす」「気が向く」「気が小さい」「気の無い」「気を抜く」「気がそられる」「気に障る」「気がまぎれる」「気を取り直す」「気が短い」など。まだまだあります。
 これだけの言葉の意味を説明するのは、「気が遠くなる」作業なので、今回は遠慮しておきます。

ああ、素晴らしき哉、日本語。(つづく)  


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