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○国語を考えてみる ああ、素晴らしき哉、日本語O 
文/学林舎国語顧問  森本 秀俊

 今年年の夏は厳しいですね。「うだるような」暑さが毎日続いています。さて。この「うだる」という言葉ですが、「茹だる」と書き、「卵が茹だる」の「ゆだる」という言葉が音変化してできたものです。「暑さのために体がぐったりする」という意味を表します。今回は、夏の言葉を見ていきましょう。
 まずは、暑さを少しでもやわらげてくれる、夏に吹く風を表す言葉です。「薫風」は「初夏に新緑の間を吹いてくる心地よい風」です。「薫風」を「風薫る」と言いかえるとやわらかい表現になります。「青嵐」は、「青々とした草木や野原の上を吹きわたってくる風」で、「薫風」よりもいくぶん強い風のことです。「青田風」は、まだ稲の穂が出ていない頃に、「青い田んぼの上を吹きわたる風」です。この風に沿って稲が揺れ、それが波のように伝わるのを「青田波」といいます。朝と夕方に、陸から吹く風と海から吹く風が入れかわる時、無風状態になることを「朝凪」「夕凪」と言います。この言葉を聞くと,私は空に漂うカモメの姿を思い浮かべます。
 続けて、夏の美しい言葉をいろいろと見ていきましょう。
 「打ち水」は、夏の暑さをしのぎ、涼を得るために、道路や庭に水をまくことです。実家の近くでは、昔、多くの家が打ち水をやっていたことを思い出します。おばちゃんたちがバケツの水をひしゃくでくみ、バシャッと道にぶちまけるのを見るだけでも、涼しげだったことを覚えています。
 次に「空蝉」です。蝉の抜け殻を表す言葉ですね。この言葉は「うつしおみ」が「うつそみ」を経て音変化してできた言葉で、もともとは「この世に生きている人」「この世」という意味を表していました。源氏物語に「空蝉」という名の女性が登場します。この女性は、控え目で慎み深く、地味な女性でありながら、立ち振る舞いが優雅で、趣味が良い女性として描かれています。
 次もまた蝉にかかわる言葉「蝉時雨」です。たくさんの蝉がいて、こちらの蝉が鳴きやんだと思うと、あちらの蝉が鳴き始める。あちらの蝉が鳴きやんだと思うと、またこちらの蝉が鳴き始める。この繰り返しで、蝉の鳴き声が、まるで時雨が降り続くようにやむことがない、ということで作られた言葉です。すごくセンスのあるネーミングだと思います。そういえば、何かの本でこんな話を読んだことがあります。蝉がいないヨーロッパのある国の人が夏に日本を訪れました。町を歩くと蝉時雨が鳴り響いています。その人は木の下に立って、木を見上げながらこう言ったそうです。「音の鳴る木ですか。私の国にはありません。とてもめずらしいですね」その人の母国の夏は、きっと静かなんでしょう。
 「草いきれ」という言葉があります。夏の強い日差しを受けて、草の茂みから立ち上がるムッとする熱気のことです。

 草いきれ 鉄材錆びて 積まれけり  杉田久女

 この句はいいですね。子どものころ、近所の空き地に行くと、よくこんな風景を見かけました。そして、積まれた鉄材に登って、飛び降りる。また、登り、「だあ」とか叫んで飛び降りる。ただそれだけのことで一時間くらいは遊べたような記憶があります。地面に降りたとき、体をむわあと草いきれが包み込む。日本の夏。少し泥臭い感じのする、たくましい夏だったような気がします。

 ああ、素晴らしき哉、日本語。(つづく) 





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