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○国語を考えてみる ああ、素晴らしき哉、日本語S 文/学林舎国語顧問  森本 秀俊

 前回は、表現技法について書きましたが、今回は表現力を身につける方法について考えてみましょう。

観察力は表現力の種
 子どもに「ゾウってどんな動物か説明して」と聞いたとします。「耳が大きくてね、鼻が長い動物だよ」などというのがふつうの答えでしょう。ところが、観察力のするどい子どもは、耳や鼻以外にも、「そうだね。目は小さくたれていて、体じゅうにシワがあり、かたそうな皮ふをしているよ」さらにするどい子どもなら、「体をゆさゆさとゆさぶりながらゆっくり歩き、大きな体をささえなければならないので、脚は太いよ」などとつけ加えるかもしれません。
 動物園に行ったときに、一つの動物を2〜3分しか見ないで、檻から檻へ駆け回る子どももいれば、檻の前に数十分もしゃがみこんで、その動物がすることをあきずにじーと見ている子どももいます。その集中力はすごいなあと感心します。
 私は特に集中力がすぐれた子ではなかったのですが、小学校の写生大会で、動物園のトラを描いたことがありました。そのときは、さすがに集中してトラを観察しました。すると、トラの口の中は、上下のはしに鋭い牙があること、目は黄色で小さな黒い点のような瞳孔があること、そして、急にしっぽをあげたかと思うと、歩いたまま後ろにおしっこをとばす、などということに気づきました。

 今、このようにトラについて説明していると、表現力を豊かにするためには、観察力がとても大切であることに気づきました。もし、写生大会でトラを描かずに、サルやフラミンゴなど、ほかの動物を描いたとすれば、トラについて、こんなにくわしく表現できなかったと思います。
 だから、子どもに表現力をつけさせるためには、観察力をきたえることも一つの方法だと思います。たとえばこんなゲームはいかがでしょうか? 
 踊ったり、歌ったり、何かを食べたりしている、ちがった格好をした多くの人が写った写真を子どもに見せます。そして、「今からこの写真を見て。どのような人が何をしているか覚えてね。その後、お母さんが5つの質問をするから、それに答えて。答えることができた数が3つ以上なら、あなたの勝ちよ」
 子どもはゲームが好きですから、写真を必死になって見て(観察して)、写真の様子を覚えようとします。そして、数分たったら、質問を始めます。「では、第1問、黄色い帽子をかぶって、紺色の背広を着ている男の人は何をしているでしょうか?」「口に花をくわえて楽しそうに踊っている女の人は、何歳くらいでどんな服を着ていますか?」子どもはゲームに勝とうとして、「そのおじさんはあくびをしながら、手にコップを持って、となりの人と話をしている」などと、必死に説明しようとするでしょう。
 このゲームのいいところは、観察力とともに、見たものを必死で話そうとすることによって、表現力も同時に身についていくことです。写真でなくても、絵本のページや図鑑などを利用してもかまわないと思います。
 「集中しなさい!」と注意するのではなく、子どもにやる気をおこさせて、自ら集中させるこのゲーム。一度試してみてはいかがでしょうか。

 ああ、素晴らしき哉、日本語。(つづく)