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○Cross Road 第52回 マルチスポーツ 文/吉田 良治


 マルチスポーツ(MultiSports)は日本でまだあまりなじみのない言葉ですが、複数のスポーツ競技を経験する、ということを意味します。子どもの頃は別のスポーツをしていて、中学や高校くらいから別の競技をするアスリートは日本でもたくさんいます。例えば今年ブレイクしたラグビーの五郎丸選手は子どもの頃サッカーをしていたので、その経験があの正確なキック力に繋がっているのでしょう。しかし一年の中で、シーズンごとに違う競技をするというアスリートは、あまり日本ではいません。現在国会議員の橋本聖子氏は元々スピードスケートの選手で、夏場のトレーニングとして自転車競技を取り入れ、アイススケートで冬のオリンピック、自転車競技で夏のオリンピックにも参加した例がありますが、シーズンで取り組むスポーツ競技を変えるアスリートは、日本でほとんど見かけることはありません。二兎を追うものは一兎も得ずという例えもあるように、一つのことに打ち込むことを美徳とし、人よりも数多く練習しないと強くなれない!という認識が根強かったからでしょう。
 しかし、今日本でもこのマルチスポーツの活用が求められていく時代となっています。
 マルチスポーツは、アメリカでは古くから取り組まれているもので、主にシーズンで異なるスポーツをすることを意味しています。アメリカでは高校まではまず複数のスポーツ競技に参加することが一般的で、多ければ3種目をこなす猛者も少なくありません。そしてオリンピックをはじめ、国際大会で活躍するアスリートの中に、このマルチスポーツを経験したものが数多く存在しています。それは国としてアメリカがスポーツのシーズン制(競技ごとに取り組むスポーツに制限をする)というスポーツ政策により、あらゆる年代のスポーツで取り組んできました。その大きな要因として、特に成長過程の子どもや若者には、一つのスポーツをすることで、身体の成長が偏らないようにすることがありました。また、複数の競技をすることで、多様な身体の動きを習得することに繋がり、バランスのとれたアスリートを輩出することに繋がります。
 また今日野球の投手に起こるひじや肩の怪我など、同じ部位に負担をかけることのリスクを減らす意味でも、マルチスポーツの活用は重要となります。さらに日本は今少子化ですので、特にチームスポーツで競技者を多く必要とする競技では、選手の確保が難しくなっていきます。現実に高校の野球やラグビーでは、単独チームを作れない高校も増えており、廃部の危機も叫ばれています。
 スポーツで成功者と言えるものはごく一部で、多くは活躍の機会を得ず去っていく分野です。ですがマルチスポーツをすることで、一つの競技で開花できなくても、別の競技で才能が発揮できるかもしれません。選手のモチベーションを維持・向上することでも、マルチスポーツは有効である、という統計もあります。スポーツが子どもや若者の成長に良いのは、単に健康な体作りだけでなく、心身とも健全であることが求められます。体罰をはじめとした人権侵害が根強い日本のスポーツ文化を改善し、様々な可能性やチャンスを見出す意味でも、日本でマルチスポーツを取り入れることは、スポーツ界だけに限らず、社会全体で良い効果をもたらす可能性があります。そしてバランスという点ではスポーツだけに偏らず、学業とのバランスを大事にすることへの配慮も重要であることは言うまでもありません。(つづく)


吉田良治さんBlog
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