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教材出版 学林舎は学習教材の制作・販売、教育商材(理科実験工作教材・アメリカの教科書など)を取り扱っています。

【GAKURINSHA TOPICS】学習教育の行き先 求められる日本語力

 OECD(経済協力開発機構)が2000 年から3年に一度実施している「国際学習到達度調査(PISA)」によって、日本人の読解力の低下が明らかになっています。調査結果は「科学的応用力」、「数学的応用力」、「読解力」の分野に分けて評価され、2015年に実施された調査における日本の順位は、それぞれ2位、5位、8位でした。日本は理系分野に比べて読解力の順位が低い傾向にあり、2006 年には読解力が15 位まで低下したことにより、ゆとり教育が見直されるきっかけにもなりました。

□日本語力低下の現状
 「読む・書く・話す」といった、いわゆる日本語力の低下は、調査対象となった子どもに限ったことではなく、大人にも当てはまる問題となっています。本来、状況が良くないことを表す「やばい」という言葉が、若者を中心に「おいしい」や「すばらしい」といった意味でも使われるようになっています。これは、表現したいことを示す的確な言葉を持ち合わせていない、あるいは咄嗟に出てこないために、特定の言い方で間に合わせている例であり、こうした表現方法の増加は語彙力低下の表れであると専門家は指摘しています。

□日本語力低下の原因
 現代社会は、地域社会との関わりの希薄化や核家族化が進んだ環境であるため、周囲の人との関わりの中で磨かれる日本語力は、ますます低下していくことが懸念されます。
 また、読書は豊かな言語表現に触れる絶好の機会ですが、2014 年に実施された文化庁の「国語に関する世論調査」で、すべての年代で本を「読まない」と答えた人の割合が増加していることがわかりました。
 このように、子どもたちの間で、国語が「できる子」と「できない子」の二極化が進んでいる背景には、周りの大人との会話や読書習慣など、日常生活の中での日本語環境が影響しています。そのため、時間の経過とともにその差が開きやすいと考えられます。

□効果的な辞書の活用方法
 今回は、日本語力を養う方法のひとつとして、辞書の活用方法に注目します。
 辞書には語句の意味はもちろん、語源や由来となった故事、用例、似た意味の言葉との使い分けなども簡潔にまとめられているので、併せて目を通すことで理解が深まり、自分の言葉として定着しやすくなります。
 中部大学の深谷圭助准教授は、かな文字を習い始める小学1 年生から、子どもが生活の中で見聞きした物事を調べさせ、自ら学ぶ姿勢を引き出す「辞書引き学習法」を提唱しています。辞書は一般的に、分からない言葉があったときに調べるものですが、「辞書引き学習法」では、次のような方法で辞書を活用します。まず、辞書の中から子どもが知っている言葉や好きな言葉を探します。そして、自分が把握していた意味が合っているかを確かめたあと、通し番号と調べた言葉を付箋に書いて辞書に貼っていきます。こうすると、調べた分だけ付箋がついて、どれだけ学習したかが目に見えるため、達成感が得られ、学習意欲が向上します。また、知っていると思っていた言葉でも、辞書を引くと、用法や漢字を誤って覚えていたことや、意外な発見があることに気がつきます。「辞書引き学習法」は指定された範囲内での学習と異なり、辞書に収録されている日本語を好きなだけ調べていく方法なので、子どもが主体的に言葉の世界を広げていくことができます。
 言葉を豊かにすることは、コミュニケーションをとる上でも、思考を深める上でも大切です。伝えたい事柄や心情を的確に表す言葉を知っていることは、相手に自分の伝えたいことを正確に伝え、相手の言葉を正確に理解するといった、相互理解に役立ちます。「考える」ときにも頭の中では言葉を使っていることから、自分の持っている語彙の範囲は思考の範囲であると言われています。
 日本語力が低下している今こそ、言葉の力を見直し、大人も子どもも豊かな日本語表現に触れる機会を増やす必要があるのではないでしょうか。(文/学林舎編集部)