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○国語を考えてみる ああ、素晴らしき哉、日本語㉑ 文/学林舎国語顧問  森本 秀俊

 人と話をしていると、「話し上手な人だなあ」と感心させられる人もいれば、必死で話をしてくれているのに、どうも話の中身がつかみきれないような人もいます。どうして、そのような違いがあるのかな、といろいろ考えてみると、「構成力、特に省略する力に差があるのではないかな」と思うようになりました。
 話の上手な人というのは、とにかく、「ここだけは絶対に伝えたい」というポイントをまずおさえてから、そのポイントが最後にぱっと輝くように、無駄なことは話さず、うまく話の流れをつないでいくようです。相手を笑わせるために、おもしろい話をするときに、こういう才能は見事に発揮されます。
 こんな話を聞いたことがありました。

 ぼくの友だちにIという奴がおってな。いい奴なんやけど、酒が無茶苦茶好きで、酔っぱらったらとんでもないことしてしまうことがあるんや。そいつが、会社の飲み会で、酔っぱらって、会社の近くの寮に住んでいる同僚に泊めてもらうことになったんや。ところが、その寮の近くに同じ会社の女子寮があって、Iは何を思ったのか、その女子寮の庭から道路に出ている木に登り始めたんや。そして、「女子寮の葉っぱは高く売れるんや」とか言いながら、葉っぱをいっぱいむしって、最後にはその葉っぱを仕事用のアタッシュケースに詰め込み始めたらしい。それで、アタッシュケースが葉っぱで一杯になると、近くの道路に停めておいた自分の車に入れて、そのまま、友だちの寮へ行って寝たんや。次の日に何が起ったと思う。Iが二日酔いの体で、車にもどると、何と車が車上荒らしにあって、そのアタッシュケースが盗まれとったんや。さて、被害を届けに行って、困ったのはIや。警察官に「アタッシュケースにはどんなものが入っていたのですか?」と聞かれて、「あ、あの、葉っぱがいっぱい入っていました。ちょっと仕事で必要なもので」とか言ってごまかしたみたいや。で、その後、Iが言った言葉。「あの車上荒らしの犯人もびっくりしたやろな。お金があると思ってかばん開けたら、葉っぱがいっぱいや。キツネにばかされたと思ったやろ」

 これは実話らしいんですが、驚くような話ですね。この話をしてくれた人は、「キツネにばかされた」というオチを話すために、なかなか難しい話をうまくまとめて話しました。あまり話が長くなりすぎると、聞くほうがあきてきます。最後のオチにたどりつくまでに、聞き手の集中力がとぎれてしまうというのはよくあることです。話の上手な人は、むだなことはできるだけ避けて、自分が話したいことがきっちりと相手に伝わる最低限の情報をうまく組み込んできます。
 子どもの作文などを見ていても、読みやすくて興味をひく作文は切れがあります。そういう作文を書く子どもは、きっと人と話をするときも、てきぱきと自分の思っていることを伝えることができるんだろうなと思います。反対に、だらだらと説明を繰り返すような文章を読むと、「ああ、この子は人と話をすることに慣れていないんだなあ」と思ったりします。
 今回はうまく話すコツとして、「無駄なことを省略する力」についてお話ししました。お子さんに毎日、学校であった一番おもしろかった出来事を、一分とかの制限時間を設定して話させてみてください。最初はとまどうかもしれませんが、要点をしぼって短く話をまとめる力が次第についてくると思います。

 ああ、素晴らしき哉、日本語。(つづく)