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教材出版 学林舎は学習教材の制作・販売、教育商材(理科実験工作教材・アメリカの教科書など)を取り扱っています。

○算数・数学から見えてくる世界 文/学林舎算数・数学顧問  深見 和孝

 前回までのコラムでは数学的表現力について書きましたが、「数学的表現力」「数学的思考力」といった教育用語は、私にはどうもピンときません。確かに、数学の問題を解くときは思考していますし、答案を書くときは表現しているのですが、私にとって「ザ・数学」を表す言葉とはちょっと違うようです。私にとって数学の面白さを表す言葉を探してみると、「スッキリ感」とでもいえばよいのでしょうか。これは、バラバラに思えたものがつながったときに生じる快感のことでして、この快感があるからこそ、数学に取り組む気になるのだと思います。
 私事ですが、最近、ゴルフにハマっておりまして、ヒマを見つけては練習場に通っています。ゴルフのスイングは奥が深く、手首や骨盤など体の部位をどう動かしたらよいのか、ボールを打ちながら常に考えているのですが、なかなか上手くいきません。ただ、ごくたまに「なるほど!」と思えるようなときがあります。たとえば、最近、肩甲骨の動きを変えると、腕の動きが変わり、クラブの軌道も変わることを発見しました。今までクラブを正しく動かそうと四苦八苦していたのが、肩甲骨の動きを意識するだけで劇的に改善されることがわかったとき、「スッキリ」したというわけです。何を言いたいのかと申しますと、部分について考えることも大切なのですが、その先に、部分と部分をつなげる発見があるからこそ、数学もゴルフも面白くなっていくと思うのです。
 数学の話に戻ります。私が中学生の頃に「スッキリ」した経験で、今でもよく覚えているものがあります。それは、関数と方程式に関することで、同じことについて、教え子のA君は「開眼した」、同僚教師のBさんは「数学の醍醐味」と言っていましたので、多くの人が「スッキ」しているのだと思います。それはどんなことか、ご紹介しましょう。
 中学では、x とy の関係を表す「関数」というものを学びます。関数は、y=x+2 やy=x
2のような式で表すことができます。また、「方程式」は、まだわからない値をxとして、等式に表したものです。中学では、x+2=2x のような1次方程式と、x2−x−2=0 のような2次方程式を学びます。さて、1次関数y=x+2 と2次関数y=xを、デカルトという数学者が編み出した座標平面に写しとると、直線と曲線( 放物線) になります。それが、次の図です。


 上の図のように、直線と曲線は2つの点で交わっています。一方、y=x とy=x+2 からy を消去して、x
2=x+2⇔x2−x−2=0 という2次方程式をつくることができます。2次方程式x2−x−2=0 を解くと、x=−1とx=2 になり、これは2つの交点のx の値でもあるわけです。
 わかっている人にとっては、「それだけのこと?」となるのでしょうが、中学生の私にとっては、「数学、すげえ〜!」と思わせるものだったのです。なぜなら、関数と方程式は別々のものと思っていたのに、座標平面の上で見事につながったのですからビックリ!頭の中が「スッキリ」したものでした。


 思考力や表現力というと何か、生徒を評価する( 成績をつける) ための用語になってしまったような気がします。思考力や表現力を身につけるために数学があるわけではないでしょうし、数学から得られることが役に立つ必要もないでしょうし。そう考えると、数学を学ぶとは、快感を得られる瞬間を期待して思考しているだけなのかもしれません。(完)