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○Cross Road 第56回 スポーツ界に今求められること 文/吉田 良治

 昨年は新国立競技場問題や、2020年東京五輪・パラリンピックの公式エンブレムの問題など、オリンピック関連でいろいろな問題が噴出しました。そして年末にはプロ野球のスポーツ賭博問題、年明けには元プロ野球選手の清原和博の覚せい剤事件、そして今月はバドミントン日本代表選手による闇カジノ事件と、次から次と様々な問題が浮上しています。
 今月2日に朝日新聞でプロ野球のスポーツ賭博問題についての特集記事“野球賭博・金銭問題・薬物… 問われる選手教育 追手門学院大学客員教授・吉田良治氏に聞く”で、私のスポーツ賭博についての考えを取り上げていただきました。
 そしてバドミントン選手による闇カジノ事件を受けて、産経新聞でも特集記事として8日の“安易に一線越えるトップアスリート 背景に浮かぶ「負けん気」「金銭感覚のまひ」”と、10日の“【激震 五輪直前エース転落(下)】アスリートには何が求められているか 勝負以前の社会性と倫理観”で、私のコメントを取り上げていただきました。
 これらのメディアで取り上げていただいた内容は、アスリートである前に一人の人間として、そしてスポーツ界の問題ではなく、社会の問題であるととらえるべきということです。賭博など不正行為に手を染めないために何が必要なのか、そのような質問が多くありましたが、スポーツ賭博や闇カジノというのは、単なる表面上に浮上してきた現象であり、根本的な問題はもっと奥の根っこにあります。
 日本ではスポーツで活躍したければ、早い時期から子供にスポーツ優先の生活をさせる傾向にありました。元日から練習をするというアスリートも珍しくないかもしれません。当然学校の授業もそっちのけ、スポーツ偏重の人生にどっぷりつかっている方もいます。大学で授業をしていると、スポーツ推薦で入学してくる学生には、大学で学ぶ基礎学力が整っていないケースも少なくありません。もちろんテストの点数がよければいいというのではなく、徳育や倫理観を養って、幅広い教養を身につけることが重要になります。それが社会で生きていく上で、人生を豊かにする術となります。スポーツ一筋の人生では、正しい教養を身につけるための、教育や社会との関わりを持つ、様々な機会を失うことにつながるのです。
 近年スポーツ偏重を見直し、文武両道を唱える日本の大学も出始めましたが、“スポーツで成功したければ、他の事を犠牲にするくらいでないといけない!”と、スポーツ偏重の人生を歩むことが、スポーツの成功に結び付く!という考えも、日本ではまだまだ根深く残っています。
 以前日本の政治家が“2番じゃあだめなんですか?”と発言をされたことがありました。アスリートなら当然答えは“No.2 is not an option!”目指すは頂点のはずです。私もスポーツの指導者のはしくれですので、スポーツの大前提“勝つことを目指す!”の原理原則は大事にしてます。しかしその頂点に立つのはたった一人だけです。スポーツでの成功、例えばオリンピックなら、一つの種目で原則金メダリストは世界で一人(もしくは1チーム)です。高校野球も甲子園で優勝するのは1チームです。プロ選手として活躍できる、収入も安定するというアスリートはごく一部です。多くのアスリートは日の目も見ずに競技人生を終えるのです。その時“私はこのスポーツのことしかわからない、これからどうして生きていけばいいのか?”という人生をアスリートに歩ませていいのでしょうか。
 アスリートはうまくなるために、勝つために一生懸命努力し、指導者はそのために知恵を絞り指導をします。
 しかし無制限にアスリートの人生を犠牲にすることは、結果的にアスリートの人生を不幸に追いやるリスクが高まります。スポーツのスコアーボードだけでなく、人生のスコアーボードにも責任を持って指導することが、真の指導者の役割です。(つづく)

吉田良治さんBlog
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