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Cross Road 第60回 スポーツマンシップ 文/吉田 良治

 このコラムが公開される頃、リオオリンピックも残り3日となっています。日本選手は期待通りの活躍で、金メダルを含めたくさんのメダルを獲得しています。そして4年後にはいよいよ東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。招致活動から開催決定まではとてもいい盛り上がりがありましたが、昨年の新国立競技場建設問題やエンブレム問題、そして招致での裏金問題など様々な問題が噴出、スポーツ界でも選手の賭博や薬物問題などの不祥事、そして未だ根深く続く体罰問題等、東京五輪・パラリンピックに向け課題が山積です。
 ブラジルでもリオオリンピックで様々な問題を抱えていますが、そんな中でスポーツの原点は何か?を再認識させてくれる出来事に巡り合えます。女子5,000m予選に出場したアメリカのアビー・ダゴスティノ選手とニュージーランドのニッキー・ハンブリン選手が接触で転倒した後、お互いを助け合いながらゴールしました。
 以前トリノオリンピックのノルディックスキー競技で、カナダの選手がストックを折り、2位にいた順位が4位まで後退しました。そのときストックを折ったカナダの選手に、ノルウェーのコーチが予備のストックを貸し、銀メダルを獲得したことがありました。カナダの選手がストックを折った後、ノルウェーの選手が2位に上がっていました。最終的にカナダの選手に抜かれ、ノルウェーは4位となりました。もしノルウェーのコーチがストックを貸さなかったら、カナダの選手がメダルを獲得することはなく、ノルウェーがメダルを獲得していたかもしれません。しかし、このコーチの行為に対し、ノルウェー国民から批判はありませんでした。
 今回リオオリンピック体操競技男子個人総合では、日本の内村航平選手が最終種目の鉄棒で大逆転金メダルを獲得しました。記者会見で“審判の採点が内村選手贔屓では?”という意味合いの質問に対し、銀メダルとなったウクライナのオレグ・ベルニャエフ選手が『無駄な質問!』と、内村選手の勝利を称えました。日本でもこの報道は大々的に取り上げられました。
 私もワシントン大学でアメリカンフットボールのアシスタントコーチをしていたころ、チームのマニュアルには、“勝ち負けに関係なく、記者会見でまず相手への敬意を伝えること”とありました。特に負けた時にどう立ち振る舞うかとても重要です。日本では負けた際、負けた原因として、自分のできなかったことを強調する傾向にあります。しかし、勝った相手が自分を上回ったことに、あまり触れません。相手が強いから勝った!という現実を受け止め、相手への敬意を伝えることが重要です。
 スポーツマンシップの原理原則は相手に対する敬意を持つことです。スポーツの世界ではどうしても勝つことにフォーカスしがちですが、その前に大前提となることがスポーツマンシップになります。お互い勝つために全力を尽くすこと、そして勝利を目指すことは、どのようなスポーツでも当たり前のことです。体罰問題が大きくなった2012年末から2013年ごろ、体罰は勝利至上主義だから起こること、という意見がありました。スポーツで勝利を目指すことも、これまた当然あるべき姿の一つです。双方がともに競い合い、最高のプレーをすることが前提となり、そこで必要なことがスポーツマンシップにある、相手に対する敬意持ってプレーする、ということです。
 2020年東京五輪・パラリンピックでは、日本が世界に素晴らしいスポーツ文化を発信する機会です。メダルの色や数も大事ですが、その前提として日本のスポーツ文化として、スポーツマンシップがしっかり根付いた風土を確立することが求められます。(つづく)

吉田良治さんBlog
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