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Cross Road 第61回 東京五輪・パラリンピックに向けて 文/吉田 良治

 このコラムが掲載される頃、リオで行われているパラリンピックも閉幕となります。そしていよいよ次は4年後に東京でオリンピックとパラリンピックが開催されます。2013年に開催都市が東京となって、国中が熱狂の渦に包まれましたが、時間が経つにつれ、様々な問題が噴出しています。大きな問題に新国立競技場を含む、スポーツ施設建設における多額の資金が必要となっている問題があります。招致段階では開催経費が7,340億円といわれていたものが、2兆円かかるとも3兆円かかるのでは?と。五輪関連で膨れ上がる経費に、国民の信頼や支持が揺らぎ始めています。2011年に起こった東日本大震災に加え、今年は熊本でも大きな震災がありました。台風や大雨による水害など、毎年のように大きな自然災害と向き合っていかねばならない日本において、被災地復興を後回しにして、一時的なイベントのために多額の税金を投入することが、果たして国のためになるのか、疑問を持たれている国民も少なくありません。動き始めた国家プロジェクトを国民一人一人が厳しい目をもって、チェックしていくことが重要となっていきます。
 都においても築地市場の豊洲移転で、土壌に関する新たなに大きな問題も噴出しています。これは東京五輪と直接関連したものではありませんが、臨海部の五輪施設へのアクセスに関わる問題でもあります。建物を建ててしまえば何とかなる、という箱もの行政の発想で税金を使うことは、そろそろ改める時期にあります。
 近年五輪招致に手を挙げる国が減りつつあります。そこには多額の資金が必要になり、国力の安定した国でないと、五輪開催は難しくなっています。世界的に景気の低迷や経済危機が叫ばれてしている時代、今は良くても開催する数年先の経済状況次第、また大会後の景気がどうなるのかも含め、ある意味ギャンブルに近い投資になるのかもしれません。ソウル五輪以降でも大会翌年に経済成長を成し遂げたのは、アトランタ大会、ロンドン大会のみでした。日本においては前回の1964年東京大会翌年から、国の借金となる赤字国債が始まり、その額が今や1,000兆円を超えました。五輪開催には大会後に景気が後退するというジンクスが存在しているのです。
 オリンピックは国ではなく都市開催が原理原則ですが、開催には数兆円規模の資金が必要になることもあり、実際国が主体とならざる負えないのが実情です。唯一町で開催を実現しているのがアメリカです。アメリカでは五輪関係に関する役割分担が決まっています。五輪関連は開催都市のオリンピック委員会、交通などの公共インフラが地方行政、そして国の役割はセキュリティです。つまり、競技施設や大会運営の全責任は、その都市のオリンピック委員会のみで取り仕切ることになります。必要な資金もオリンピック委員会が整えることになります。アトランタ五輪の際は、競技会場に近隣の多くの大学のスポーツ施設が活用されました。つまりオリンピック委員会の支出を最小限に抑え、今あるものを有効活用したのです。そして大会後も大学の施設で活用し続ける、オリンピックレガシーとなっているのです。選手村も大会後には大学の寮として活用されたのも、18歳になると親元を離れることが一般的なアメリカでは、大学で学生寮を充実させるニーズに合っていたからです。アメリカでは五輪開催と大学の運営には大変深い関係があり、地域の経済成長の起爆剤となっています。(つづく)

吉田良治さんBlog
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