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○Cross Road 第65回 スポーツと暴力 文/吉田 良治

 1 月7 日の朝日新聞朝刊に編集委員の中小路氏のコラム<縦横無尽>“ 上級生の暴力なくすには”が掲載されました。
 昨年末に報道された日大東北高校相撲部の顧問による暴力問題を受けての内容で、2013 年1 月8 日に大阪桜宮高校バスケットボール顧問による体罰で、生徒が自殺をした報道が始まって4 年になるこの時期に合わせたものでした。そして記事の後半は指導者の体罰と並び、上級生から下級生への暴力問題が取り上げられ、こちらも指導者の体罰同様、日本のスポーツ界で長年続く悪しき伝統といえます。
 強くなるためには厳しい練習が必要!つらい練習を乗り越えていくためには、指導者や上級生が選手や下級生へ厳しい態度で接することが、選手や下級生を成長させることに繋がると考えています。これはスポーツに限らず人間が成長するうえで、大変重要な要素ではありますが、どこまでの厳しさが練習や部活全般で許されるのか、選手の実力や体力、そして性格などの違いによって効果や結果が変わってきます。そこをしっかり把握できていることが重要になりますが、最も重要なことはスポーツマンシップの最重要要素である、“ 相手に対する敬意”を持っているのかどうかで、着地地点も大きく変わってきます。そして決して踏み越えてはいけないこととして、事情がどうあれ暴力を指導に使うことは“ 犯罪行為”であり、いかなるケースでも容認されることはありません。スポーツにおいては、“ 多少の厳しさがないと強くなれない”そして教育の現場では、“ 生活指導で過ちをした生徒には体罰くらい当たり前”“ 多少の体罰も必要! ”と考える方はそれぞれの現場においてまだ多くおられます。もし、これが会社の職場で上司が部下にしたらどうなるでしょう?間違いなく暴行事件として扱われます。一般社会では犯罪になることが、スポーツや教育の現場では、“ 多少は仕方がない! ”では、本当の教育にはなりません。
 躾や指導で子どもや生徒、そして選手をどう導くのか、特に親、教師、コーチが向き合うべきは、子どもや生徒、そして選手の前に、自分自身に向き合うことです。そして指導する立場の者が模範となるべき姿勢を子ども、生徒、そして選手に示すことにあります。そこに敬意をもって接することが重要で、それがなければ人は動きません。
 近年“ モチベーション”という言葉が取り上げられますが、日本では指導者や上級生が言葉で鼓舞するだけでなく、必要以上に行き過ぎた言動で、選手を追い込むケースが多くみられます。しかし、モチベーションという言葉の起源“Motive”は、自らの力で動機づけすることを意味しています。つまり自分から進んでやろう!という気持ちは当事者自らの手で作り上げていくもので、人から言われて出来上がるものではありません。モチベーションは自動車の燃料のようなもので、燃料が燃料タンクに入っていない自動車のように、エンジンが動くことはありません。モチベーションという燃料は人に入れてもらうのではなく、自分で入れることが重要になるのです。選手自ら燃料タンクにモチベーションという燃料を入れるために、指導者がすべきことは人権意識と敬意をもって選手と接することと、選手自らがモチベーションを高めることができるよう、その環境づくりを設定することが重要となります。(つづく)


吉田 良治プロフィール
 1962年生まれ。1998年にワシントン大学へアメリカンフットボールコーチ留学。2000年リーグ制覇、2001年ローズボウルに出場し、ローズボウル制覇に貢献。国家レベルのリーダーシップ教育に貢献した、ランブライト元ワシントン大学ヘッドコーチよりリーダーシップ教育を学ぶ。
 全米の大学で人格形成プログラム普及に貢献した、ライス元ジョージア工科大学体育局長よりライフスキル教育を学ぶ。

吉田良治さんBlog
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