本文へスキップ

教材出版 学林舎は学習教材の制作・販売、教育商材(理科実験工作教材・アメリカの教科書など)を取り扱っています。

○Cross Road 第66回 スポーツとライフスキル 文/吉田 良治

 毎年秋に宮崎で開催されている、プロ野球の若手育成の「みやざきフェニックス・リーグ」において、現役若手プロ野球選手への「セカンドキャリアに関するアンケート」の調査が行われています。そして翌年1月末にNPB・日本プロ野球機構からその結果が発表され、今年も1 月27 日に発表されました。
 引退後の生活に不安を持つ若手選手は毎年7 割近くおり、2016 年度の調査では67%と2 年ぶりに70%を切りましたが、依然として多くの若手プロ野球選手が、競技引退後の人生に不安を感じています。引退後の生活に不安を持つ要因として、野球以外の職業で生きていく術がないという問題も大きいのではないでしょうか。プロ野球選手に限らず、日本ではスポーツをしていれば、勉強をしなくても許される風潮が長年続いてきました。スポーツで成功するために、スポーツ以外のことは犠牲にしなければ、成し遂げることができない!という考えが根底にあります。しかし、スポーツの成功、例えば優勝を成功とするなら、優勝という椅子はたった一つで、それ以外のチームは全て失敗者となります。参加するチーム全てがこの“ 優勝するためには、スポーツ以外を犠牲にしても良い! ”という考えで取り組んでも、優勝する1 チーム以外は成功することにつながりません。つまり“ 優勝するために全てを犠牲にしなければいけない”という考えは、スタートの時点で理論破綻しているのです。
 昨年からスポーツ庁で議論が始まった日本版NCAA構想は、アメリカの大学スポーツを倣い、日本の大学スポーツを改革することが目的となっていますが、この議論のスタートはアメリカの大学スポーツがプロを凌ぐ収益を上げているので、日本の大学にも稼いでもらおう!という発想でした。しかし、アメリカでは単に競技力が高いから人気があるのではなく、学生が限られた時間で競技力を高める努力をしながら、大学で高い教育を受け、社会のリーダーとして国を支える人材となっていくという、高い理念に国民の共感が集まるからにほかありません。
 日本に比べプロスポーツが盛んなアメリカでも、プロに進めるものはごくわずかです。最も人気のあるアメリカンフットボールでも、高校で100 万人以上いたアメフト選手も、大学では7 万人に激減します。そしてNFL では1 チームの登録枠は53 名です。つまりプロのアメフト選手は1,700 人に満たないのです。ドラフトで高い順位の指名を受けても、この登録枠に残れなければ、選手生命は数か月で終わります。引退後のことをしっかり考えて準備をしておかないと、その日が突然やって来た時、途方に暮れることになります。
 NCAA(全米大学体育協会)がアメリカの大学スポーツで、学生のスポーツ参加に学業成績の高い基準を設けているのは、大学ではアスリートの前に大学生としての義務を果たすことと、競技引退後のセカンドキャリアに備えるといった意味があります。日本版NCAAを実現させるためには、まずはスポーツの前に果たすべき義務である、教育を疎かにしない方針を示すことが重要となります。
 2025 年には日本でも今ある職業の49%が、AI に取って代わられる!といわれています。現在の小学生の多くは、まだ存在していない職業に就くともいわれています。いかなる職業に就くとしても、最低基本的な教育のベースが必要です。プロ野球選手ならわかるはずです、バットを握ったことのないものが、ドラフト指名をされることがないことを。スポーツ競技者を引退し新しい分野へ進んでいく際、その道で生きていくために必要な能力を育む為、スポーツだけに偏らず教育のバランスを整えることが重要となります。(つづく)

吉田良治さんBlog
http://ameblo.jp/outside-the-box/