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○Cross Road 第76回 体罰問題 文/吉田 良治

 5年前の12月23日に大阪・桜宮高校の生徒が、部活の顧問による体罰により自殺をした事件以降、スポーツの指導や教育の現場での体罰を改める動きが高まりました。しかし、まだまだ日本のスポーツ界や教育の現場、そして家庭での躾で体罰は根深く残っています。先月に発覚した大相撲・横綱日馬富士による暴力事件も、後輩力士への躾という位置づけによる暴力でした。今年は高校スポーツでも暴力による体罰が多く起こっており、体罰を無くす取り組みが進んでいないことが改めて浮き彫りになりました。
 昨年12月には高校の相撲部顧問による体罰が発覚、朝日新聞でスポーツと暴力についての記事が掲載されたことを受け、今年最初の“Cross Road 第65回”でもスポーツと暴力をテーマにしました。年の最初に取り上げたスポーツと暴力問題は、12か月たった年末にまたこのテーマを取り上げなければいけないのは、とても心が痛みます。
 スポーツにはスポーツマンシップという、スポーツに関わるものが共有していく大きな行動指針・心構えがあります。私は色々な機会でスポーツマンシップを紹介する際、“ROOTS(根っこ)”という言葉を使って説明します。“ROOTS”はRule(規則), Official(審判)、 Opponent(対戦相手)、 Team(チーム)、 Self(自分自身)、5つの言葉の頭文字から成ります。スポーツを構成するこの5つの要素に対して敬意を示す心構えを身につけてこそ、スポーツに参加する資格を得るのです。よく体罰は愛情のある暴力なら許される!という方もおられますが、暴力は犯罪行為ですので、法律というルールを破っている時点で、(ルールを尊重する)スポーツマンシップの価値を失っています。愛情があるから法律を破っていいということにはならないのです。スポーツは社会の一部です。スポーツをする上でそのルールを厳守するように、社会の一員としてスポーツに関わるものは社会のルールを守る義務があります。
 来年2018年は韓国の平昌で冬季オリンピック・パラリンピックが開かれ、2019年には日本でラグビーワールドカップも開催されます。そして3年後はいよいよ東京で夏季オリンピック・パラリンピックが開催されます。またスポーツ庁が進めている大学スポーツ改革、所謂“日本版NCAA”も本格的に動き始めており、スポーツが社会に与える影響はどんどん高まっていきます。近年ロシアのドーピング問題がクローズアップされています。禁止薬物を使用して手にした金メダルには何の価値もないように、社会のルール(法律)に違反した暴力で強くなってもそれは何の価値もないのです。正しいスポーツ運営を実現するためには、指導者、選手、そしてスポーツに関わる全てのものが、日々の生活で継続してスポーツマンシップを育む実践を行うことが重要となります。
 2020年東京五輪・パラリンピックにおいて、メダルの数が日本のスポーツのすばらしさを示すのではなく、正しく選手を導くために、日本のスポーツ界が暴力と決別し、正しい指導法を確立して、初めて世界に日本のスポーツの価値を示すことができるのです。(つづく)


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