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学林舎NEWS 2017.1.20 成長する思考力GTシリーズ国語文法講座(3)


「日本語における助詞の位置(3)」

 前回(「日本語における助詞の位置(1)」「日本語における助詞の位置(2)」)までに述べてきたのは助詞が単なる「5W1H」を表すだけのものになっていくのではないかということでした。しかし、単純にそうなりきれない日本語の歴史的ありようがあることも忘れてはなりません。
 たとえば、つい先頃パソコンで入力していて、なるほどと思ったことがあります。「キリンは首が長い」という文を入力したとき、「は」と「が」に緑の波線が入り、文法上の誤りとしてチェックされたのでした。
 確かに、英語の文法的発想からいえば、主語らしきものがふたつもあるのだから異常といえば異常です。たとえばこれを英語の得意な若い校正者に見せたら「キリンの首は長い」と即座に訂正してしまうでしょう。
 日本語の表現構造を単純な「5W1H」一辺倒の形式に当てはめてしまったら、日本語として表現する意味をなくしてしまう一例です。日本語の表現で非常によく使われている「〜は〜が」という構造については文法学者の間でも論議されてきたことです。
 しかし、日本語は単純な「5W1H」の形式論で片付けられないという立場をとる人が大方を占めています。その中のひとりが、かの有名な三浦つとむです。彼は「認識と言語の理論」の中でこの構造に関して次のように言っています。

 「対象の構造に主体的表現を対応させる日本語の特徴的なあり方であって、これを利用するところに立体的な対象に対する立体的な認識構造を単純な文で示すという独自な形式が生まれたわけである。」

 簡単にいえば、表現したい対象そのものを独立させることによって、対象の特徴を強調するという手法です。

 これをさらに具体的に、次のような2系列で説明しています。

 @父は頭が白い。

 A紳士は金髪がお好き。

 この2例は認識構造がちがいます。「父」と「頭」は一つの実体の全体と部分の関係にあるが「紳士」と「金髪」はそれぞれ別の実体です。ここでの「は」は特殊性を取り上げるものであって、「父」の身体の特徴や、「紳士」の生活の特徴的なありかたについて語ろうとするものです。したがって、一方は「頭」に、他方は「お好き」に結びついています。
 対象はまずその特殊性の側面の個別性において、二重にとらえられながらひとつの文に統一して表現され、立体的な認識が「は」と「が」の使い分けで区別して示されています。
 対象の特徴を強調するための、最も簡単な表現方法として、対象に「は」と「が」を付属させ、独立性をもたせたのです。このように日本人の表現のありようが、日本語での助詞の位置を決定しているのです。
 助詞の学び方も、単に使い分けを覚えるだけでなく、筆者の思いがこめられている部分として見れば、結構おもしろく学ぶことができるのではないでしょうか。(文/学林舎編集部)


【関連データ】
成長する思考力GTシリーズ国語10級「文のしくみ」の構成
第1回〈 「の」「で」「を」などの文字のつかい方を学ぶ 〉―格助詞
第2回〈 「は」「ばかり」「こそ」などのつかいかたを学ぶ 〉―副助詞
第3回〈 「ば」「けれど」「ので」「ながら」などのつかい方を学ぶ 〉―接続助詞
第4回〈 どんなようすかをあらわすことばのつかい方 〉―形容詞
第5回〈 どんなようすかをあらわすことばのつかい方 〉―形容動詞
第6回〈 ようすやていどをあらわすことばのつかい方 〉―副詞
第7回〈 どんなものかをあらわすことばのつかい方 〉―連体詞
第8回〈 音やようすをあらわすことば 〉―副詞
第9回〈 ていねいなことばのつかい方 〉
第10回〈 カタカナをつかうことばを学ぶ 〉