2019.12.20

2019年 学習の行き先  受験を考える

 「受験」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるでしょう。小学校・中学校・高等学校・大学など、子どもが成人するまでには様々な受験の機会があります。高等学校への進学率が97パーセントを超えている日本では、多くの人が高校受験を経験しているのではないでしょうか。しかし、将来、高校受験は多くの人が通る道ではなくなるかもしれません。
 その要因の一つが、中高一貫校の増加です。1998年の「学校教育法等の一部を改正する法律」の成立に基づき、1999年から中高一貫教育が導入できるようになりました。中高一貫校の数は年々増加し、1999年の4校から20年経った2018年には、635校となりました。今後も増加すると考えられています。
 私立校だけでなく、公立の中高一貫校も増えています。一般の公立の中学校・高等学校と同じ学費で通えるため人気が高く、出願倍率や偏差値も高くなっています。ただし、公立の中学校に入学する場合には受験する必要はありませんが、中高一貫校の場合は、公立であっても受験する必要があります。
 ここで、中高一貫校の受験について、簡単に説明しておきます。

●中学受験(私立・中高一貫校)
 多くの中学校では、国語・算数・理科・社会の4教科による「学力検査」が行われます。ただし、小学校で教わる内容を超えて出題されることが多いです。知識量が求められますが、それだけではなく「自ら考えることができるか」も選考の対象となります。また、公立と同様の「適性検査」、「算数のみ」「英語のみ」など、各校の特長を生かした試験方法をとる学校もあります。

●中学受験(公立・中高一貫校)
 学校教育法施行規則のため、「学力検査」は行えません。そのため、「適性検査」や「作文」などで選考されます。適性検査では、国語・算数・理科・社会などの区別はなく、小学校で教わる内容から自分で考えて答える問題が出されます。知識量よりも「自ら考えることができるか」が選考の対象となっています。

 どちらも文部科学省が掲げる「自ら学び自ら考える『力』の育成」に従い、「考える力」に重点を置いています。

 では、中高一貫校の増加に伴い、高校受験はどのように変化したのでしょうか。
 中高一貫校への高校受験は、たいへん厳しいものとなっています。高等学校からの入学者を募集している学校もありますが、募集人数はとても少なくなっています。また、中学校の間に高等学校の分野を学んでいることも多く、高等学校から入学した場合は、未習箇所を補わなければなりません。教師にも生徒にも、たいへんな負担となるため、近年では高等学校の募集を停止する学校が増えてきています。中高一貫校への入学を希望する場合は、中学受験から考えるほうがよいでしょう。
中高一貫校の増加により、高校受験者数が減ったという見方もあります。とはいえ、中高一貫校は、まだ全中学校の1割にも達していません。文部科学省が中高一貫教育を推進しているため、今後の増加は予想できますが、まだまだ多くの中学生は、これまで通りの高校受験を経て中高一貫校ではない高等学校へ進学することになるでしょう。
 高校受験の次は、大学受験です。高等学校卒業者の大学・短期大学の進学率は年々増加していますが、少子化が進み高等学校卒業者数は年々減少しています。学生数確保のため、中学校・高等学校と提携する大学が増えています。「附属校」という形だけでなく、「準附属校」「系列校」などの形をとって推薦枠を増やしたり、併設大学への推薦権を保持したまま他の大学を受験できるようにしたりと、各大学で工夫を凝らしています。行きたい大学に附属校や系列校があるのなら、高等学校を受験しておくほうがよいでしょう。
 大学受験を優位にするための高校受験、高校受験を優位にするための中学受験と、受験の優位性だけを考えると、どんどん若い年齢での受験となってしまいます。ですが、小学校の時点で、自分の行きたい大学や、将来なりたい職業などを決められるでしょうか。「受験」することが目標ではありません。行きたい学校が見つかった時に、最善の「受験方法」を選べるように、どのような選択肢があるのかを事前に知っておくことが大切であると考えられます。 (文/学林舎編集部)