2018.06.16

【GAKURINSHA TOPICS】
2018年教育の行き先「小1プロブレム」「中1ギャップ」「高1クライシス」

 「小1プロブレム」「中1ギャップ」「高1クライシス」という言葉が近年使われ始めています。この耳慣れない言葉にはどのような意味があるのでしょうか。「プロブレム(問題)」「ギャップ(大きなずれ)」「クライシス(危機)」、いずれも不安をかき立てる言葉です。これらは、子どもたちを取り巻く教育環境が大きく変化する小1・中1・高1の時期において、その変化に適応することの難しい子どもたちがいることを表しています。

○小1プロブレム
小学校に入学したばかりの子どもたちは、新しい環境にとまどいながらも、徐々に小学校や教室、新しい友だちに慣れていきます。しかし、「小1 プロブレム」に陥ることもあります。「小1 プロブレム」とは、『入学後の落ち着かない状態がいつまでも解消されず、教師の話を聞かない、指示通りに行動しない、勝手に授業中に教室の中を立ち歩いたり教室から出て行ったりするなど、授業規律が成立しない状態へと拡大し、こうした状態が数か月にわたって継続する状態(東京都教育委員会)』と定義されています。
小1プロブレムが発生する原因としては、他者とのかかわりが希薄で、集団での行動を身に付けることなく小学校に入学してくる子どもの増加や、家庭での基本的なしつけが不十分であることなどがあげられます。小1プロブレムを解消するために、未就学児童のいる家庭でのしつけの呼びかけや、幼稚園・保育園と小学校の連携などが図られていますが、抜本的な解決には至っていません。

○中1ギャップ
小学校から中学校に進学し、環境の変化に適応できずに、不登校やいじめなどの問題が発生する現象のことを指します。中学校に入ると、学習面でも生活の面でも大きな変化がおこります。学習面では、それまでの担任教師による授業から、科目別の教師による授業へと変化、授業のスピードも難易度もあがり、定期テストも行われるようになります。また、生活面では、クラブ活動が始まり、先輩・後輩という新しい人間関係が発生します。このような大きな変化に適応できず、学校に行きたがらない、口数が減る、部屋に引きこもるようになる、などの問題行動がおこることがあります。
中1ギャップを克服するためには、どのような対策があるのでしょうか。家庭では、子どもが自分の不安や悩みを話しやすい環境を整えることがあげられます。話を最後まで聞き、親の体験を話すなど、子どもの悩みを受け止める環境が望まれます。また、学習のつまずきも大きな要因となるため、学習面では、学校が中心となってフォローしていく必要があります。

○高1クライシス
中学を卒業し、受験をのりこえ入学した高校で、小1・中1と同じように、環境に適応できず、不登校や引きこもりなどの「高1クライシス」とよばれる現象に陥ることがあります。小1・中1の変化の状況に加えて、進路の問題がさらに子どもたちの大きな壁になっていることがあげられます。また、「自分とは何者なのか」といった思春期特有の不安にとらわれることもあります。「高1クライシス」が小1・中1の問題と大きく異なるのは、高校が義務教育ではない点です。「高1クライシス」が退学という結果に至ることがある点で、問題はより深刻です。
高1クライシスを克服するには、家庭や学校が子どもを注意深く見守ることに加えて、カウンセリングや心療内科の受診なども考えられます。新しい環境に適応していく順応性、不安にうち克つ心を培っていくことが何より大切です。(文/学林舎編集部)