○Cross Road
第81回 新社会人の睡眠障害 文/吉田 良治
近年若者を中心に睡眠に関する障害が増えています。医学的には睡眠不足症候群と呼ばれるもので、最も顕著なのが大学を卒業した新社会人でその傾向が強まっています。
大学は高校までと違い毎日決まった時間に大学へ登校することはありません。高校までは一般的に毎朝8時40分ごろには授業が始まりますので、その時間には席について授業を受ける体制ができています。しかし、大学では学生ごとに履修する科目が異なり、大学へ登校する曜日、時間帯は一定とはなりません。一時間目に履修している授業がいない場合、当然その時間帯に登校する必要はありません。大学は90分授業ですので、朝9時が一時間目なら二時間目は通常10時40分開始(休憩時間10分を含む)となります。一時間目に履修する授業がなければ、1時間30分遅く登校になるため、ほかのことにその時間を割り当てることができるのですが、その時間を睡眠に充てる学生も少なくありません。逆算すると朝起きる時間が遅くなれば、当然就寝時間も遅くできます。それが所謂夜型生活を送る温床となっていきます。学生時代に夜型生活の習慣が身についても、履修している授業に出席し、単位が取得できていけば支障がありませんが、新社会人となり企業に就職すると、毎日始業時間に合わせて出勤し、仕事をすることになりますので、社会人として生活習慣を合わせなければなりません。しかし、4年間続けてきた夜型の生活習慣が、新社会人となった4月からすぐ昼型に適応することはできません。入社した当初は緊張感で乗り切ることができても、GW明けから梅雨の時期にかけて、昼間の眠気に襲われる新社会人が、医療機関に駆け込んでくるケースが急増しています。
高校までは登校する時間は一定していましたが、睡眠時間が十分確保できていたかというと、そうともいえないようです。文科省の調査では小学生で午後11時までに就寝する割合は85.4%ですが、中学1年生になると59.8%に減少、受験勉強の追い込みとなる中学3年生となると22.6%に激減します。高校生になると16.4%まで下がってしまいます。毎日同じように高校へ登校する高校生ではほぼ完全な夜型生活が定着しています。朝起きる時間が一定でも、夜寝る時間が遅くなれば、当然睡眠不足となっていきます。その睡眠不足の蓄積が近年深刻になっています。所謂“睡眠負債”といわれるものです。この睡眠負債は休日に寝だめをすることで解消はできませんので、毎日規則正しく、十分な睡眠時間を確保することが必要となります。睡眠負債状態に加え、毎日必ず一時間目から登校する必要がなくなる大学生になると、朝早く起きる必要がなくなり起床時間が遅くなるので、朝定時に仕事をする社会人生活に適応できなくなっているのは必然といえます。近年はスマートフォンの使用など、深夜遅くまで起きる機会が増えているので、夜型生活をいかに改善するか、自己コントロールが大きなカギとなります。
睡眠不足は単なる仕事や就学など、通常の社会活動に支障をきたすだけでなく、生活習慣病をはじめ精神疾患を招く健康問題にも発展していきますので、日ごろから十分な睡眠がとれるよう、日々のタイムマネジメントを整えることが重要となります。(つづく)
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