2018.04.21

【GAKURINSHA TOPICS】
2018年教育の行き先 プログラミング教育で何が変わる

 2020 年から、小学校でプログラミング教育が必修化されます。プログラミングといわれると、コンピュータを動かすためのプログラムを書けるようになること、と思われがちですが、小学校で行われるプログラミング教育は、このプログラミング言語を習うことではありません。では一体何を学ぶのかをみていきましょう。
 近年、「第 4 次産業革命」とも表現されるような、人工知能(AI)が進化してさまざまな仕事を行ったり、ものごとがインターネットを通して最適化されたりする新しい社会がやってくると考えられています。この新しい社会の中で子どもたちに求められることは、新しい何かではなく、これまでにも重視されてきた読解力や問題解決能力などを、きちんと発揮できることです。また、情報化が進んだ社会では、読解力をさらに発展させた情報活用能力を身につけ、論理的・創造的に思考していく必要があります。
 この思考の過程で、情報を活用するためにコンピュータはなくてはならないものです。コンピュータは、たくさんの情報を収集したり整理したりするのに向いています。子どもたちに求められることは、このように便利なものが、どういうしくみで動いているのかを理解し、コンピュータに必要な指示を出せるようになることです。
 ですので、小学校では、まず子どもたちが、身近なところでコンピュータが活用されていること、何か問題を解決するには手順を踏んでコンピュータを使う必要があることに気づき、さらに自分がやりたいことをするにはどのように進めればよいのかを、論理的に考えられるようにすることが目標とされます。このように、作業の手順や組み合わせを論理的に考えられるようになる学びを得る教育を、プログラミング教育とよんでいます。プログラミング教育で得た論理的思考力は、将来どのような職業に就こうとも、その職業がこれまでにない新しい職業であろうとも、普遍的に求められる力だと考えられています。
 このように論理的思考力を身につけるためのプログラミングですが、必修化するといっても新しく教科としてつくられるわけではありません。算数や理科といった今ある教科や総合的な学習の時間において、各教科の学びの中で行われる教育です。例えば、理科で電気を学ぶときに、電気製品はプログラムに従って動いていることを実験などで体験し、その便利さを理解し、どのように指示を出せば正しく動くのかを考えて、順序立てて指示を出すといった形で学びます。これは、個人が黙々とコンピュータに向かって作業をするのではなく、「主体的・対話的で深い学び」を実現するために他者と協働する必要がありますし、抽象的な内容を学ぶのではなく、子どもの生活や体験と結びついた内容にする必要があります。また、楽しかったという感想だけで終わらないように、学習成果も考える必要があります。
 現在、各小学校でこのような形でのプログラミング教育が行えるように準備が進められています。ICT の環境の整備が進められ、教員の養成や研修も行われています。質の高いプログラミング教育を提供するためには、小学校だけでなく社会との連携や協働が必要です。しかし、プログラミング教育とは何かということについては、現在まだ周知が進んでいない実態もあります。2020 年にかけて、文部科学省をはじめ各教育機関でも、教材の準備などが進められていくでしょう。(文/学林舎編集部)