○Cross Road
第79回 マートンが3.11東日本大震災に寄せた思い 文/吉田 良治
東日本大震災発生から今年で 7 年となりました。改めてお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、亡くなられた方々のご遺族にお悔やみを申し上げ、今も被災地で生活をされていた方々、さらに被災地を離れ生活をされている方々にお見舞い申し上げます。東日本大震災から 7 年、3 月 11 日にマット・マートンが 2 つのツイートを発信しました。
https://twitter.com/mmurton9/status/972658034521575424
https://twitter.com/mmurton9/status/972658098476285953
マートンから今回の東日本大震災のツイートについてメールがありました。シンプルに、“ 日本を愛している! ”と書かれていました。2015 年は広島での 3連戦中、8 月 6 日に平和記念式典に参列、2014 年は日本シリーズ前日と 8 月末の 6 連戦中、彼は 2 度西成のホームレスへ炊き出しに参加、2011 年には追手門学院大学でライフスキルの授業を実施、さらにチームの勝利 1 勝につき 50 キロのお米を東日本大震災被災地へ送り、2010 年はシーズン中に小児病院へ慰問と、機会があれば社会の問題にしっかり目を向け、マートン自身が必要なアクションを起こしてきました。野球選手である前に一人の人間として、あるべき姿を彼は示しました。それは日本を離れて 3 年が経った 今も日本のことを思い、メッセージという形でアクションを起こしています。
実は 2011 年 3 月 12 日に読売新聞の企画で、マートンとアスリート教育について対談する予定でした。結局前日に東日本大震災が起こり、対談は延期になり企画そのものが成立するか、それどころではないという事態になりました。しかしマートンはこの企画の重要性を理解し、翌 4 月に広島で対談を実現させました。そしてその年の夏に読売新聞で 7 回連載、私もマートンとの対談禄を基に著書『日本の大学に入ると、なぜ人生を間違うのか』を執筆し、マートンが大学時代に学んだトータル・パーソン・プログラムというアスリート教育を紹介しました。そして本の発売日は 2015年 3 月 11 日でした。3 月 11 日はマートンと色々な縁がありました。
2020 年に東京で五輪・パラリンピックが開催されます。東京五輪・パラリンピック開催地決定を受け安倍首相は、“2020 年の東京オリンピック・パラリンピックでは、東日本大震災からの復興を見事に成し遂げた日本の姿を、世界の中心で活躍する日本の姿を、世界中の人々に向けて力強く発信していく。 それこそが今回の東京開催決定への感謝の気持ちを表す最善の道であるとそう考えます。”と発言されました。復興五輪を掲げる今回のオリンピックには、開催費の高騰で多額の税金が使われ、震災復興が後回しになるのでは!との懸念が高まりました。
真の復興五輪とは何でしょう?マートンの母校ジョージア工科大学のあるアトランタにそのヒントがありました。1996 年アトランタ五輪・パラリンピックでは、ジョージア工科大学をはじめ地元大学のスポーツ施設を活用し、選手村は大会後学生寮になりました。つまり、競技施設などの建設費はその大部分を大学が負担し、公的な資金の投入はほとんどありませんでした。そして今も多くの施設がレガシーとして活用されています。
ジョージア工科大学の OB のジミー・カーター元大統領は 93 歳の今も金槌を握り、低所得者や災害被災者のためにボランティアで家を建てています。人として社会の中でどうあるべきか、国のリーダーがその姿を先頭に立って示すから、国民は社会の問題について、当事者意識をもって正しい行動をとります。トータルパーソンという、教養を基にした総合的な人間力は、リーダーの正しい方向性と実践により育まれ、社会を豊かにする原動力となります。( つづく )
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