2018.02.17

○Cross Road
第78回 平昌オリンピック日本人選手メダル第一号から学ぶ人間力 文/吉田 良治

 今月は韓国の平昌で冬季オリンピックが開催されています。連日世界中のトップアスリートの熱戦が伝えられている中、日本人メダル第一号はスキー・男子モーグルの原大智選手の銅メダル獲得でした。これまで世界の大きな舞台で、目立った活躍がなかった原選手には、本番のオリンピックで努力の成果を発揮する大きな力を備えていました。朝日新聞の報道によると、原選手は中学を卒業後単身カナダに留学し、モーグルの技を磨いたとのこと。但し、地元の高校にも通ってまじめに学業にも取り組んだそうです。親元を離れ、言葉の通じない国で一人生きていくことは、中学を卒業したばかりの若者にとって、大変ご苦労が多かったことでしょう。
昨年読売新聞がフロリダ大学に留学経験のあるプロゴルファー東尾理子氏を取材し、アメリカの大学へ留学する日本の若いアスリートの特集記事で取り上げました。この記事で東尾氏の経験として取り上げられたことは、『授業や予習・復習の合間にゴルフの練習の毎日、“ これを乗り越えたら、人生で怖いものはない! ”』でした。入学後最初の試験でスポーツ参加基準の学業成績を下回ると、練習などのチーム活動に参加できなくなり、それ以降必死で勉強をしたそうです。結局卒業まで勉強が主、ゴルフは息抜きになった!とのこと。さらに学業とゴルフ両方で成績優秀賞を獲得するなど、文武両道で実績を上げられました。“ おかげで自分の中に芯が一本通った! ”で記事が締めくくられていました。
原選手は“ 人生で一番苦しい時間”“ 技術もメンタルも、カナダですごく強くなれた。15 歳の決断は間違っていなかった”と、カナダでの高校生活とスキーの両立を振り返り、東尾さん同様人間力の芯が大きな役割を果たしたといえます。
<渋谷生まれ、世界驚かせた原大智 カナダでつかんだ確信 朝日新聞デジタル版より>

 今月は朝日新聞で体育会系大学スポーツに対する厳しい内容の特集記事もありました。記事のタイトルが“(耕論)体育会、生きづらい?岡崎仁美さん、為末大さん、荒井弘和さん”、就職関連の大手リクルートの関係者、元トップアスリート、そしてスポーツ心理学の専門家などへのインタビューで構成されています。
 体育会系が新卒採用で優遇される時代はもう過去の話、スポーツ偏重ではこれからの厳しい時代に打ち勝つことはできない!封建的な体育会系の風土が生み出す“ イエスマン”なら、AI に人の仕事が奪われる時代、真っ先に切り捨てられてしまいます。また社会のブラック問題やパワハラといった人権問題の温床となる!そしてスポーツをしてきたら精神的に鍛えられるのはうそ、むしろアスリートの方が撃たれ弱い!それぞれの専門家の鋭い指摘は、これまでスポーツをしていたら、社会で生きる上でいろいろと有利!といわれた時代ではなくなっている、いやむしろスポーツの経験だけでは“ 生きづらい”時代になっているのでしょう。
 今年は初夏にロシアでサッカーのワールドカップがあり、来年はラグビーのワールドカップが日本で開催、そして2020 年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。日本の関係する世界的なスポーツイベントが目白押し、メディアも連日日本選手の活躍を報道しますが、我々が目にするのはトップ中のトップアスリートのみです。スポーツが社会の中でどう価値を示すのか、メダルの数で測るのではなく“ 競技力は人間力の上に宿る! ”一アスリートの前に一人の人間としてどうあるべきか、人間の土台となる人間力をいかにして高めるのか、日本のスポーツ界はアスリートの人間力向上の環境を整えることが重要となります。(つづく)

吉田良治さんBlog