○Cross Road
第83回 スポーツマンシップ 文/吉田 良治
今年は冬に平昌五輪・パラリンピックが開催され、夏はサッカーのワールドカップが開催されました。平昌オリンピックでは日本選手が大活躍、男子フィギュアスケートの羽生結弦選手が2連覇、国民栄誉賞も授与されました。サッカーワールドカップでも日本代表は戦前の予想を覆し、グループステージを突破しベスト16入りしました。プロ野球では今年から大谷翔平選手がメジャーリーグに挑戦、日本同様二刀流で活躍しています。
来年は日本でラグビーワールドカップが開催予定で、再来年はいよいよ東京五輪・パラリンピックが開催されます。日本ではこれからますますスポーツに注目が注がれていきます。
一方年明けから東京オリンピックで活躍が期待される、トップアスリートクラスの不祥事が続出しています。また、昨年から続く大相撲の暴力問題、レスリングのパワハラ問題等、日本のスポーツ界で続く人権をそこなう行為も中々改善がされません。そして5月には日本大学アメリカンフットボール部の選手が、関西学院大学との定期戦で危険タックルをした問題が発生しました。この問題では指導者の体罰やパワハラの温床もありました。厳しさがないと強くなれない、という声も聞こえてきそうですが、体罰やパワハラは法律に違反する、れっきとした犯罪行為です。スポーツの世界にはルールがあり、ルールを守ることが前提で成り立っています。ルールを逸脱する行為がなければ強くできないなら、それはもうスポーツではなくなってしまいます。スポーツ界は社会の一部であり、そこで活動する者も社会の一員ですので、社会で守らなければいけないルールは、スポーツ界でも尊重し、厳守していくことが求められます。つまり、体罰やパワハラは既にスポーツ界でも犯罪行為である、という認識が必要となります。
スポーツ界にはスポーツマンシップという、スポーツ活動における行動指針があります。スポーツを構成するルール・審判・対戦相手・チームメイト・そして自分自身を尊重することが、スポーツマンシップの根本です。そしてこのスポーツマンシップを基に実践することが、スポーツ界で起こる様々な不祥事の改善につながっていきます。
さらにこのスポーツマンシップの実践は、社会生活に置き換えると、社会で生きるシチズンシップに繋がっていきます。昨今様々な不祥事が起こると聞かれる言葉、“不徳の致すところ”があります。日本中に不徳が蔓延する中、スポーツ界がまずスポーツマンシップを基に社会の模範ある人材を育成すること、そしてそれを社会にフィードバックすることで、不徳社会から徳を育む社会へと変えるムーブメントとなります。
不祥事が起こると謝罪の会見でよく聞かれる言葉、“再発防止に努めます”は、ある意味その場しのぎの念仏にすぎません。形だけやりました、というアリバイ作りでは何も変わりません。具体的な実践とその継続が重要になります。
今年4月にPHP研究所から発売された政治経済論壇誌Voice2018年5月号に、“スポーツに暴力は必要ない”という論考を寄稿しました。今後日本のスポーツ界が新しい時代に合った運営の一助となれば幸いです。(つづく)
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