2018.08.24

2018年教育の行き先
 夏休みの自由研究に関して考える

 夏休みには、多くの小学校で宿題として自由研究が出されます。また、文部科学省後援の自然科学観察コンクールを始め、さまざまな企業や財団法人が主催する自由研究に関するコンクールも数多くあります。今回は、自由研究について学習指導要領の変遷とともに分析したいと思います。
 「自由研究」は、昭和22 年の春に配布された学習指導要領に、教科の1 つとして加えられました。戦後の新しい教育課程の基準としてつくられたこの学習指導要領では、個性の完成を目標とし、そのために自由を尊重すべきとされていました。その中で、自由研究は、児童の自発的活動を促すために、児童が各自の興味と能力に応じて教科の活動では充分に行うことのできない自主的な活動を、教師の指導のもとに行うための時間として設けられました。しかし、昭和26 年に学習指導要領が全面的に改訂され、自由研究は、児童各自の興味や能
力に応じて個性を伸ばすのに役立つ、委員会やクラブ活動などの教科以外の活動の時間を設けることで、発展的に解消されることとなりました。
 教科としての授業時間はなくなった自由研究ですが、その後も総合的学習の時間での活動や、夏休みの宿題として残ってきました。それは、学習指導要領が改訂されていく中で、知識を身に付けるだけではなく、自ら課題を見つけ、学び、考える力が重要視されるようになり、そういった力の育成に自由研究が有効であると考えられているからです。
 現在、ほとんどの小学校理科の教科書には、自由研究に相当する活動に関する内容が記載されています。児童が自分でテーマを設定し、実験・観察の計画を立て、実際に実験・観察を行い、結果についてまとめて発表するという、具体的な研究の進め方についての内容で、教科書の中盤に記載されていることが多いことから、夏休みの宿題としての自由研究を想定したものと考えられます。教科書で紹介されている研究の進め方が、通常授業での実験・観察や総合的学習の時間での活動ではなく、夏休みの宿題としての自由研究を想定している理由は、「長期間の研究が可能」であることと、「児童が各自で行う研究」を重視しているためであると考えられます。
 通常授業では、長期間の研究を行うには限界があります。また、総合的学習の時間での活動などでは、グループ活動が行われることが多く、教員の指導も入ります。しかし、自由研究本来の目的は、あくまでも児童各自が興味のある内容について、教科の学習内容に限定されず、児童各自の能力に基づいて研究を行うことです。そのため、自由研究本来の目的により近い、夏休みの宿題としての自由研究が重視されていると考えられます。
 学校によって差はありますが、自由研究は、テーマを科学分野に限定する必要はありません。社会でも、国語でも、児童各自が最も興味のある内容について調べることが重要です。宿題だから仕方なく…ではなく、自分が好きなこと、おもしろいと思うことに注目して、自分の興味のある内容について、研究が行えると良いですね。(文/学林舎編集部)