○Cross Road
第84回 夏のスポーツから見えたこと 文/吉田 良治
今年は日本のスポーツ界でいろいろな不祥事が起こっています。悪いことに目を奪われがちですが、日本のスポーツにも素晴らしい出来事はたくさんありました。それらから学び実践しながら、スポーツ界がまた再び輝きを増すことに繋がればと願います。
夏のスポーツといえばなんといっても高校野球です。今年の夏の高校野球は100 回目の記念大会で、例年の49校から7校多い56校が参加しました。決勝戦は大阪桐蔭高校が史上2度目の春夏連覇をかけ、金足農業高校と対戦し、13-2 で大阪桐蔭高校が見事春夏連覇を達成しました。
参加校が増えたことで、最近問題になる熱中症のリスクや疲労の蓄積などの問題は、前半の試合間隔も若干長くなった分、選手への負担や疲労は少し軽減できたのかもしれません。しかし温暖化の影響で体温越えの気温も珍しくない昨今、日中を含め最大一日4試合行われる高校野球にも、何らかの対応が求められています。選手の健康状況に加えスタンドで応援する観戦者も、熱中症のリスクが高まります。気温の高い日中の試合を無くし、ナイターなどを活用する、甲子園以外にエアコン機能のある大阪ドームなども会場にするなど、色々な意見もありますが、夏休みの限られた期間での実施ということもあって、条件的なことを考えると、すぐに結論が出るものではありません。
そんな今年の夏の高校野球の中で特に素晴らしかった出来事といえば、大阪桐蔭高校の選手が相手選手のけがなどの際、すぐに応急処置に駆け付ける、という行為がありました。とっさのことではありますが、すぐに行動できるということは、日ごろから常に相手のことも考えて行動していないと、いざというとき迅速に動くことはできません。スポーツマンシップには5つの要素への敬意を持つことが重要と言われています。その5つの要素を纏めると一つの英語の単語になります。それは“ROOTS”です。ROOTS とは植物の根を意味します。スポーツマンシップの重要な要素としてのROOTS とは、まず“R”がRule(規則)を意味し、二つある一つ目の“O”はOfficial(審判)、もう一つの“O”はOpponent(相手)、“T”はTeammate(チームの仲間)、そして“S”はSelf(自分自身)を意味します。
つまり、スポーツ活動に関わるこれらすべての要素に対し、敬意を持って行動することが、スポーツマンシップの根本(ROOTS)となります。大阪桐蔭高校の選手が試合中に行った行為は、相手を意味する“O”への敬意を形にしました。そして試合後金足農量高校のエース吉田輝星投手のもとには、大阪桐蔭高校の選手たちが駆け寄り健闘をたたえ合いました。スポーツマンシップがしっかり根付いたチームであることがわかります。
夏のはじめに行われたサッカーワールドカップでは、日本代表チームがグループリーグを勝ち上がることができた要因として、反則数の少ないことによるフェアプレイポイントがありました。つまりルールに則って試合をした証である“R”への敬意を形にしたわけです。また日本代表チームはベスト16で敗退後、使用したロッカールームをきれいに清掃してスタジアムを後にしました。つまり、これはロッカールームをチームの仲間と見立て、“T”への敬意であり、そして潔く去る“S”の自分自身への敬意を意味します。
今年スポーツ界では様々な不祥事が発生しています。大阪桐蔭高校の選手やサッカーワールドカップ日本代表チームが示したスポーツマンシップ像から、スポーツ界はしっかり学んでいただきたいと願います。(つづく)
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