2018.11.16

○Cross Road
第87回 スポーツの在り方を考える 文/吉田 良治

 
 東京五輪・パラリンピックまであと2年を切りました。来年は日本でラグビーのワールドカップも開催されます。世界的な競技大会が続いていく中、今年は日本のスポーツ界、特にトップレベルのアスリートや指導者、そして運営する競技団体や大学の幹部による不正なども多く発生しました。スポーツ庁では大学スポーツを統括する団体、所謂“日本版NCAA”の創設に向け設立準備委員会を設置し、15の専門部会が環境整備の議論を行っています。10月22日の会合では正式名称“大学スポーツ協会(UNIVAS)”となり、来年度“UNIVAS”の本格稼働を目指しています。私は学業充実・学習機会確保の部会に参加し、学生アスリートがスポーツ活動で学業をおろそかにしないための環境整備を行っています。
 日本ではスポーツだけしていれば、高校や大学受験、そして就職でも有利とされ、学業をおろそかにしてきた歴史があります。この学業軽視・スポーツ偏重の文化が、今日本中で起こっているスポーツ界の不祥事の温床となっていると感じます。まずスポーツ界はそこで活動するアスリート、指導者、そして運営に携わるすべてのもの全てが、社会の模範となる人材、国を背負って立つ人材の輩出を第一に考え、スポーツの役割、スポーツをする価値の創造につながる取り組みを実践することが求められます。
 UNIVAS設立においてもっとも大きな難題の一つは、不祥事などコンプライアンス対応で、今年数多く発生したスポーツ界の不祥事対策は、ある意味最大の懸案となっています。今年5月のゴールデンウィーク終盤、アメリカンフットボールの伝統の一戦、関西学院大学と日本大学の定期戦で起こった危険タックル問題は、今年スポーツ界で起こった問題で最も影響が大きかった1つです。チームは秋の公式戦出場停止の処分を受け、指導者を一新してチーム再建を行っています。6月にチームよりご依頼をいただき、スポーツマンシップセミナーを提供しました。そのご縁もあり10月よりチームプログラムをサポートさせていただいています。ベースはアメリカの大学スポーツで盛んに取り組まれているアスリートプログラムをもとに、ライフスキルやスポーツマンシップを実践することを主に構成しています。この取り組みが単にチーム再建にとどまらず、UNIVASや日本のスポーツの先行事例となればと願います。
 日本アメリカンフットボール協会(JAFA)では、日本大学アメリカンフットボール部の問題を受け、フェアプレイ推進委員会が立ち上がり、再発防止とフェアプレイの2つのワーキンググループが活動をしています。私はこの2つのワーキンググループに参加し、全国の大学アメリカンフットボールの関係者と議論を重ね、日本の大学アメリカンフットボール界からフェアプレイとスポーツマンシップの文化創造を目指しています。
 スポーツで起こった問題は、スポーツに関わるものが当事者意識をもって取り組むことが重要となります。2020年東京五輪・パラリンピック開催の際、日本のスポーツ界は世界にどのような価値を示すのか?それがメダルの数しかなければ、不祥事の連鎖は止まることはありません。(つづく)

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