2018年教育の行き先 他国からみる英語教育の比較
英語教育に注目が集まり始めて久しいですが、日本人の英語能力は伸び悩んでいます。世界116か国で語学教育事業を展開するEF(イー・エフ・エデュケーション・ファースト)が作成した「EF EPI英語能力指数2018年版」では、日本は全88か国中49位という結果でした。2011年には全44か国中14位であったものの、その後順位を落とし続けています。そんな中、日本と同じアジア圏にありながら、高い順位に位置している国々もあります。韓国やベトナムやインドなどの国々です。今回は、日本の英語教育について考えるため、インドの英語教育を比較対象として取り上げます。
1.インドにおける英語の歴史的背景
インドは長くイギリスの植民地でした。インドがイギリス支配下にあった時代、国民は英語の使用を強要されていました。独立後はヒンディー語が正式な公用語になりましたが、英語も準公用語として使用されています。インドでは他にも多くの言語が使用されています。しかし、現在では、世界共通語である英語に対する教育の強化が、インド全体で広まっています。
2.インドにおける英語の幼児教育
インドの未就学児は、プレスクールと呼ばれる幼児教育機関に通ったのち、初等教育を受けるのが主流です。ここでの使用言語は主に英語です。ヒンディー語に慣れ親しんでいる子どもたちも多くいますが、授業を受けるうちに、自然と英語を身につけることができます。
幼少期(3~4歳)の英語教育は、「フォニックス」に焦点を当てたものが多いです。「フォニックス」とは、英語の「音」を「文字」に結びつけるためのルールです。このルールを身につけることで、知らない単語に出会っても発音することができるようになります。「文字」からではなく、「音」から英語に親しむ教育により、ネイティブが母国語を身につけるのに近い形で英語を習得できるのです。
また、プレスクールでは、教師の質も非常に高いです。スクールは教師の学歴を公開しており、親たちは、スクールの教育方針・教師の経歴・マネジメント及び、口コミなどからスクールを厳選します。その結果、プレスクールの競争率が上がり、質の向上につながるため、子どもたちはよりよい環境で教育を受けることができるのです。
3.インドにおける初等・中等教育事情
インドの公立小中学校では、主にヒンディー語で授業が行われますが、一部の学校では英語で授業が行われています。また、特に中心都市では、子どもたちを私立学校へ通わせる家庭も多く、私立のほとんどの学校では英語で授業が行われています。このような事情から、初等・中等教育への足がかりとして、プレスクールでの英語教育の強化がなされているのです。
4.インドの職業事情
インドではIT産業が盛んです。その理由の1つに、インドの地理的優位性があります。アメリカで開発されたソフトウェアを、12時間の時差があるインドへ夜のうちに送り込むことにより、休むことなく開発が進められるのです。このように、英語圏の人々と共同で仕事を行うため、「英語ができること」がIT産業界で仕事を行える必須条件になります。国内に留まらない職業事情が、英語教育への関心を高めているのです。
日本では2020年から小学校で英語が教科化します。まず、小学3・4年生で「外国語活動」として、そして、5・6年生「教科」として英語を学んでいきます。小学校から英語教育をスタートすることにより、小学校から大学入試までの一貫した英語教育が期待されていますが、インドの英語教育と比べると、圧倒的にスタート時期が遅いと言えるでしょう。また、英語が実生活に関わっておらず、あくまで「教育」の範囲に留まっていることも英語能力向上につながらない原因かもしれません。英会話教室や家庭学習教材を利用して英語に触れあうことはできますが、日本全体として、英語教育に対する意識を高める必要があるでしょう。(文/学林舎編集部)
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