2018年教育の行き先 学習進度、飛び級に関して考える
公立の小中高校の学習進度は、文部科学省によって学年ごとに細かく定められています。よって、その生徒の学年を聞けば、「何を勉強しているのか」がおおよそ把握できます。一方で、塾では昔から「先行学習」として学年にとらわれない学習進度がとられてきました。また、最近の私立の中高一貫校などでは、中学1年生から高校2年生までの間に、中学・高校の6年分の学習内容を全て学び終わり、高校3年生の1年間でしっかり受験対策を行うなど、独自のカリキュラムをとっている学校もあります。そして、全国で指定されたわずか7校においては、生徒の成績によって、高校生が大学に飛び級で進学することが認められています。このように、近年、学習の進め方が少しずつ多様化しています。
諸外国では、年齢に関係なく優秀な人材が大学へ進学できる「飛び級進学」の制度が、日本より浸透しています。内閣府の資料によると、13~15歳の子どもが在籍している学校の内訳は、日本ではほぼ100%が中学校や高校です。しかし、韓国やアメリカ合衆国などでは、必ずしも学年と在籍校は日本のように対応していません。前述したように、日本にも一部飛び級進学はありますが、「高校に2年以上在学したこと」などが大学進学の条件になっているため、基本的に13~15歳の子どもが大学に進学することはできません。このように、日本の子どもは、諸外国の子どもにくらべて、個々の能力に応じて自由に学習進度を選べないことがわかります。
では、公立の小中学校で先行学習や飛び級が認められない根本的な原因は何なのでしょうか。それは、日本の年齢主義社会です。日本では、6歳から15歳までは小中学生、16歳から18歳までは高校生、18歳から22歳までは大学生と、年齢によっておおよその学年がわかります。これは、誰もが大差のない教育を受けることができるという点では良いですが、一方で個人の能力や個性に合わせて学習進度を調整することは難しいです。また、社会人になってもその人の年齢を聞けば「もうすぐ定年ですね」などと思う人も多く、人生のライフイベントと年齢が強く結びついています。このような日本の年齢主義社会は、グローバル化や情報化が進み、変動が激しい時代をむかえるにあたって変化しなければ、世界の国々と肩を並べていくことはきびしくなると考えられます。
今後は、公立の小中学校でも、生徒一人一人に合った学習指導を積極的に行えるように、制度を整えることが急務です。まず、私たち一人一人が、年齢主義にもとづく教育に対して、疑問をいだくことから始めましょう。(文/学林舎編集部)
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