○Cross Road 第89回 自立の勧め 文/吉田 良治
今年は1月14日が成人の日でした。約125万人の若者が新成人となりました。既に社会にでて仕事をしている方もいますし、大学生などで引き続き学び続けている方もおられ、それぞれの人生を歩んでおられます。これまで20歳で成人とされてきましたが、2016年より18歳から選挙権が得られ、2022年4月から正式に成人年齢が18歳に引き下げられることになっています。煙草やお酒など喫煙や飲酒、公営ギャンブルなどは今まで通り20歳からですが、携帯電話やクレジットカード、一人暮らしで賃貸物件の契約、高額商品のローンを組むことなど、これまで20歳以上でないとできなかったことが、18歳からできることになります。早ければ高校在学中に18歳を迎えるので、今後より早い時期から自立に向けた導き・教育の提供が必要になります。
アメリカでは高校卒業後親元を離れて生きていく・親離れが一般的で、地元の大学へ通う場合であっても、大学の寮などで生活する若者が多くいます。2015年まで阪神タイガースで活躍したマット・マートンと、2011年に読売新聞の企画で対談した際、高校卒業後親元を離れて生きる若者が多い理由をマートンに聞いたところ、“アメリカでは高校卒業後自立するという考えが一般的で、高校卒業後も親と同居していると、「あの家は何かおかしいのではないか?」と思われてしまう!”と話していました。“Independent” の国・アメリカですので親は、子供が高校卒業後自立して生きていくよう躾をしていくことになるのだそうです。マートン自身も実家から自動車で1時間ほどの大学へ進学しましたが、大学寮で生活したそうです。高校卒業が親から自立して生きる!その自覚が親、そして子双方に必要だ、と話していました。
精神的な自立はできても経済的な自立は簡単ではありません。高卒後就職するのであれば親からの自立は可能ですが、大学進学となるとフルタイムで仕事ができない分、経済的な自立は困難です。そのうえアメリカの大学の学費は、州立大学でも年間1万ドル以上になることが一般的で、私立大学になると4年間で家1軒購入するくらいのコストがかかります。大学生が経済的に親へ依存せず生きていくために、アメリカの学生は奨学金や学資ローンなどを利用することになります。
アメリカでは大学進学とその費用は人生の投資と考えて、卒業後投資した資金の回収、つまり投資対効果を意識して大学進学を考えます。マートンが進学したジョージア工科大学では、大学卒業後20年間での収入総額と、高卒後24年で得られる総収入との差額が77万~85万ドルの開きが出てくるといわれています。ジョージア工科大学の4年間の学費総額が10万~18万ドルですので、その投資が80万ドルの効果が見込まれるということになります。学位によっては5年目未満の平均年俸は7万ドルを超え、職歴1年未満でも6万5,000ドルです。新卒者でも高額年俸を得ることができるのは、即戦力として仕事ができるからです。日本の場合大学新卒初任給は21万~22万円が一般的で、年収にすると260万円となりますから、学位に対する価値が職能とリンクしているということが、日米で新卒者の年収に反映されます。
日本の場合は新卒者に入社後一から仕事を教えていくことが一般的で、入社後初日からバッターボックスに立って結果が求められるアメリカとは、社会人スタート時点で格段の差があります。これは自立に対する意識、学費が人生の投資という教育の差ともいえるのかもしれません。(つづく)
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