2019年学習の行き先 4月から実施される学習指導要領に関して-算数・数学
小学校では2020年度から、中学校では2021年度から「新学習指導要領」が全面実施されます。「新学習指導要領」を円滑に実施するために、学校では徐々に「新学習指導要領」の内容を一部取り入れていきます。これを移行措置といいます。また、徐々に内容を取り入れていく移行期間は、小学校では2018年度~2019年度、中学校では2018年度~2020年度とされています。
今回は小学校の算数・中学校の数学で2019年度に新たに実施される移行措置に関して、内容に触れながら考えたいと思います。
【小学校】
まずは第3学年には、今年度から既に実施されている「量と測定」に「メートル法」が追加されました。長さや重さの単位について調べる活動を通して、関係をまとめて理解を深めることが大切にされています。これまでは第6学年で学習していた「メートル法」の単位の仕組みについて第3学年で学習し、活用することで、今後学習する新たな単位についても類推して量の大きさを考えられることがねらいとされています。
次に第4学年には、「数と計算」に「小数を用いた倍」が、「数量関係」に「簡単な場合についての割合」、「量と測定」に「面積の単位とこれまでに学習した単位との考
察」が追加されます。「小数を用いた倍」の追加については、小数を用いることで、数の表し方を広げることがねらいであると考えられます。「簡単な場合についての割合」では、2つの数量の関係がもう一方の数量の整数倍で表される場合について、2つの数量の関係と別の2つの数量を比べるときに割合を用いることを図や式を使って学習します。 「面積の単位とこれまでに学習した単位との考察」の追加については、長さの単位の関係をもとに、面積の単位間の関係を考察して理解させ、大きさの感覚を育成するねらいがあります。
第5学年は「量と測定」に「速さ」、「体積の単位とこれまでに学習した単位との考察」が追加されます。また「分数の計算」の中の、「分数と整数の掛け算・割り算」が省略され、第6学年で指導することになります。「速さ」の追加については、以前までは第6学年で学習していた内容を、第5学年で学習することになります。「体積の単位とこれまでに学習した単位との考察」の追加については、第4学年の「面積の単位とこれまでに学習した単位との考察」の追加と同じ理由が考えられます。
【中学校】
第1学年には、「数と式」に「素数の積」が、「資料の活用」に「累積度数」が追加されます。また、「誤差や近似値、a×10nの形の表現」は省略され、第3学年で指導することになります。「数と式」への「素数の積」の追加については、小学校で学んだ算数の整数の性質についての理解を深め、中学校の学習につなげていくねらいがあります。今回の学習指導要領の改訂で「資料の活用」の領域の名称が「データの活用」に改められました。この改訂により、生活の中で学習を活用することや統計学とのつながりを重視し、統計をより深く学習するために「累積度数」が追加されたのではないかと考えられます。
第2学年には2019年度に追加された内容はありませんが、2020年度から「データの活用」に「四分位範囲」及び「箱ひげ図」が追加されます。これらは、2つ以上のデータを比較する際に、視覚的な比較がしやすい統計的な表現として、「箱ひげ図」を取り扱い、「四分位範囲」と「箱ひげ図」を用いて、複数の集団におけるデータ分布の傾向を読み取って考察するというねらいがあります。
今回は2019年度の4月から実施される学習指導要領の算数、数学の移行措置に関して主に考えていきましたが、改訂の全体の傾向としては統計的内容の追加が多くなり、必要なデータを収集、分析し、その傾向を踏まえて課題を解決するための統計教育の充実が計られています。「新学習指導要領」の実施で教育にどのような変化が起こるのか、今後注目していく必要があります。 (文/学林舎編集部)
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