2019年学習の行き先 今後の学習評価
文科省から『児童生徒の学習評価の在り方について(報告)』が発表され、その中で、「子供たちの学習の成果を的確に捉え、教員が指導の改善を図るとともに、子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにするためには、学習評価の在り方が極めて重要である」と書かれています。
学習評価は、学校における教育活動に関して児童生徒の学習状況を評価するもので、各教科の評価については、学習指導要領に定める目標に準じた評価として、「観点別学習状況の評価」やこれらを総括的に捉える「評定」、児童生徒一人一人のよい点や可能性、進捗の状況についての評価として、「個人内評価」を実施するものとされています。
「観点別学習状況」の評価は、これまでは「知識・理解」、「技能」、「思考・判断・表現」、「関心・意欲・態度」の4観点で評価していましたが、新学習指導要領における『児童生徒の学習評価の在り方について(報告)』では、目標に準じた評価の実質化や、教科・校種を超えた共通理解に基づく組織的な取り組みを促す観点から、小・中・高等学校の各教科を通じて、次の3観点に整理することとされています。
○知識・技能
○思考・判断・表現
○主体的に学習に取り組む態度
「知識・技能」の評価は、各教科等における学習の過程を通した知識及び技能の習得状況について評価を行い、それらを既有の知識及び技能と関連付けたり活用したりする中で、他の学習や生活の場面でも活用できる程度に知識等を理解したり、技能を習得したりしているかについて評価するものです。具体的な方法としては、ペーパーテストにおいて、事実的な知識の習得を問う問題と、知識の概念的な理解を問う問題とのバランスに配慮する等の工夫改善を図るとともに、例えば、児童生徒が文章による説明をしたり、各教科等の内容の特質に応じて、観察・実験をしたり、式やグラフで表現したりするといった、実際に知識や技能を用いる場面を設ける等、多様な方法を適切に取り入れていくことが考えられています。
「思考・判断・表現」の評価は、各教科等の知識及び技能を活用して課題を解決する等のために必要な思考力、判断力、表現力等を身に付けているかどうかを評価するものです。具体的な方法としては、ペーパーテストだけでなく、レポート等の作成や発表、グループでの話し合い、作品の制作や表現等の多様な活動を取り入れたり、それらを集めたポートフォリオを活用したりする等、評価方法を工夫することが考えられています。
「主体的に学習に取り組む態度」の評価については、①「知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取り組みを行おうとする側面」と、②「①の粘り強い取り組みを行う中で、自らの学習を調整しようとする側面」の2つの側面を評価することが求められています。具体的な方法としては、ノートやレポート等における記述、授業中の発言、教師による行動観察や、児童生徒による自己評価や相互評価等の状況を教師が評価を行う際に考慮する材料の1つとして用いること等が考えられています。その際、各教科等の特質に応じて、児童生徒の発達の段階や一人一人の個性を十分に考慮しながら、「知識・技能」や「思考・判断・表現」の観点の状況を踏まえた上で、評価を行うことが必要とされます。
これらの「観点別学習状況の評価」や「評定」は、高等学校入学者選抜、大学入学者選抜の質的改善が図られるようにする必要があるとされています。例えば、高等学校入学者選抜においては、学力調査当日の成績だけでなく、中学校の一定期間における学習評価を踏まえることで、生徒の学力をより公平、正確に把握することができる、また、「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に学習に取り組む態度」の各観点のバランスを把握することができる等の利点があると考えられています。一方で、学習評価を児童生徒の学習改善や教師の指導の改善につなげていくという点がおろそかになる場合がある、中学生が入学時から常に内申点を上げることを意識した学校生活を送る状況になる等の課題も指摘されています。中学校における学習評価は、あくまでも学習や指導の改善を目的として行われるものであるため、調査書の作成にあたっては、そのねらいを明確にし、学力検査の成績との比重や、学年ごとの学習評価の重み付け等についての検討が必要になると考えらます。(文/学林舎編集部)
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