2019年学校の行き先 産学連携
産学連携とは、新しい技術の研究や開発、新しい事業の創出を目的として、大学などの教育機関・研究機関と民間企業が連携することです。ここに政府や自治体といった「官」が加わり、産官学連携と呼ばれることもあります。産官学連携には、それぞれが持つ技術を融合させて新たな技術の開発を可能にしたり、学生・研究者がより実践的な研究に加わることを可能にしたりするなどのメリットがあります。いくつか事例を見ていきましょう。
株式会社日立製作所は、東京大学・京都大学・北海道大学との共同ラボを設置しています。東京大学内に開設された「日立東大ラボ」では、日本政府が提唱するSociety5.0(超スマート社会)を具体化するビジョンを創生・発信し、その実現に向けた課題解決のための研究や開発などに取り組んでいます。また、京都大学内に開設された「日立京大ラボ」では、「ヒトと文化の理解に基づく基礎と学理の探究」をテーマにした共同研究や、人や生物の進化に学ぶ次世代の人工知能(AI)の共同開発、最先端クラスの電子顕微鏡を使った新しいサイエンスの発見にも取り組んでいます。さらに、北海道大学内に開設された「日立北大ラボ」では、北海道が直面している少子高齢化や人口減少、地域経済の低迷、地球温暖化などの社会課題の解決に向けた共同研究に取り組んでいます。
産学連携として、大手企業が莫大な費用や時間をかけて行っている一方で、中小企業が取り組んでいる事例も多々あります。大阪信用金庫は、大阪府立大学と地元中小企業のコーディネーターとなり、共同研究による新製品・新技術の開発、技術相談、及び学術交流等の支援をしています。例えば、塩昆布の老舗「株式会社舞昆のこうはら」は大阪府立大学との共同研究により、塩昆布に血圧降下・血糖上昇抑制効果のある発酵熟成塩昆布の製品化に成功しました。これまで累計14億円を売り上げ、顧客登録数は12万名を超えたということです。
産学連携はさまざまな形態がありますが、文科省は、次のような5つの形態に類型化しています。
1 企業と大学等との共同研究、受託研究など研究面で の活動
2 企業でのインターンシップ、教育プログラム共同開 発など教育面での連携
3 TLO(Technology Licensing Organization:技術移 転機関)の活動など大学等の研究成果に関する技術 移転活動
4 兼業制度に基づく技術指導など研究者によるコン サルタント活動
5 大学等の研究成果や人的資源等に基づいた起業
こうした活動は相互に密接に関連しており、担い手である企業、大学等の規模、形態、研究分野等によって、様々な産学連携の進展が予想されます。
大学等における産学連携等実施状況(文科省・平成29年度)によると、受託研究実績件数は、東京大学1,743件、京都大学1,023件、大阪大学977件、九州大学856件、東北大学740件の順になっており、官を除いた民間企業からのみの受託研究実績件数は、近畿大学325件、立命館大学248件、慶應義塾大学226件、日本大学204件、拓殖大学157件の順になっています。
大学は、その機能として「教育」と「研究」が知られてきましたが、近年は「社会貢献」が加わり、大きく3つの柱で運営されるようになりました。現在は特に産学連携による技術移転や新産業創出に社会の関心が高まっていますが、これらは大学による社会貢献の一形態であり、各大学においてはそれぞれの個性・特色に応じた方法で、社会への責務を果たしていくことが期待されます。(文/学林舎編集部)
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