○Cross Road 第91回 大学生の読書時間 文/吉田 良治
毎年、全国大学生活協同組合連合会が学生生活実態調査を行っています。その中で気になる問題として、大学生の読書時間の少なさが指摘されています。近年この調査では大学生の一日の読書時間が0時間、つまり全く読書をしない割合が半数いるということがわかってきました。2012年までは30%台でしたが、2013年以降40%を超え、2017年はついに半数を超え53%となりました。昨年の調査では48%と若干改善はされましたが、依然として5割近い大学生が読書をしない実態があります。今回の調査では現状だけでなく、高校生以下の時期での読書習慣の調査も行われ、高校時代から31%が読書をしていないことがわかりました。小学生までは1時間以内の読書をする割合が半数近くありましたので、早い時期からの読書習慣を持つことが重要なカギではないか、と思われます。
今年プロ野球中日ドラゴンズに入団した根尾昴選手は大の読書家として知られています。大阪桐蔭高校時代も、毎月実家(岐阜県)から20冊ほどの本が届き、それらの本を熱心に読んでいたとのこと。遠征の移動中も一人本を読んだり勉強をしていたとのこと。中学生時代は学業成績もオール5で、文武両道を実践してきた根底には、読書力も大きな役割を担ってきたと感じます。
また、今年メジャーリーグに挑戦しているシアトル・マリナーズの菊池雄星選手も読書好きとして知られています。週に5冊、多い日には一日3冊本を読むこともあるとのことで、一日中書店で過ごすことも苦にならないとのことです。アスリートにとっても読書によるインプットは、競技におけるアウトプットにも大きな効果があるといえます。
先月大阪市内の小学校でシアトル・マリナーズの“D.R.E.A.M Team”プログラムを実施しました。先月は難病の子どもの夢の実現を支援するNPOメイク・ア・ウィッシュが以前サポートした、白血病の少女清水美緒さんを取り上げました。生きる希望を持つために清水さんが大事にした夢は絵本を作ることでした。清水さんが作った絵本をD.R.E.A.M Teamプログラムに参加した小学生に紹介したところ、プログラム終了後多くの児童たちが早速その本を読んでいました。読書をするきっかけはたくさんあります。何か良いきっかけを作ってあげると、子どもたちは自分の意思で読書をし始めます。子どもたちから“どんな本を読んだらいいの?”という質問をいただくことがあります。興味を持った本ならどんな本でも良いので、たくさんの本と出会い、いい刺激を受けてくれれば、それが子供たちの成長を支える土台となっていきます。少しでも多くの子どもたちが、読書の習慣を身につけて、多くの良い本と出合うことで、子どもたちが大学へ進む時期には、大学生の読書時間0の問題もなくなっているのではと思います。
マリナーズのD.R.E.A.MのEはEducationで、読書力をつけることを目的にしています。今年初めてマリナーズでプレーする菊池選手は、シーズンが始まりすぐシアトル市内の小学校で“D.R.E.A.M Team”プログラムに参加することになります。選手の経験談は子供たちに良い影響をもたらしますので、是非シアトルでも読書の大切さを子どもたちに共有していただきたいと願います。(つづく)
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