2019年学習の行き先 生活習慣の違いが学習につながる
近年、子どもを取り巻く生活環境は、めまぐるしく変化し続けています。昔の光景としては、季節を問わず外で元気に遊ぶ子どもの姿が目に浮かびますが、現代の多くの子どもは、休日のみならず平日の放課後も、塾や習い事など、大人も顔負けの忙しい生活を送っています。一時、ゆとりある教育を目的として施行された「ゆとり教育」もあまり効果は出ず、平成が終わり令和の時代に入ろうとする今も、その忙しさは留まりそうにありません。このような変化の背景には、戦後から始まった学校での詰め込み教育、核家族化や少子化の進行に伴う家庭における教育環境の変化、そして厳しくなり続けている受験戦争などがあります。
このように、昨今の子どもは学力を高めるという目的のもとに忙しい生活を送っているのですが、その忙しさは彼らの学習を阻んではいないでしょうか。小学生を対象にした、心身疲労状態に関するあるアンケートによると、小学生が自覚している症状は、1位が「あくびが出る」で20%強、2位は「眠い」で15%強、3位は「横になりたい」で15%と、全て睡眠不足に関係する疲労でした。さらに続く4位は「目が疲れる」で15%弱、5位は「ちょっとしたことが思い出せない」で15%弱と、学習の障害となる心身疲労であることがわかります。こうした疲労の大きな原因の1つは、詰め込まれすぎた教育です。子どもの学力の向上を目的として生じた忙しさが生活リズムの崩れに繋がり、皮肉にも彼らの学習を妨げる大きな一因になっているのです。
健康的な生活を送るポイントは、食事、運動、睡眠など様々ですが、子どもの学力にとって特に影響のある事柄は睡眠であると考えられます。平成18年に山口県で行われた調査によると、夜9時までに寝る子どもの偏差値は高く、それ以降に寝る子どもの偏差値は低いと言う傾向が出ました。早寝早起きが生活のリズムや健康状態を整え、学習能力の向上にもつながるのです。
人間は体内時計というものを持っています。1日は24時間ですが、人間の体内時計は24時間よりやや長いと言われています。それでは、どのようにして私たちは体内リズムを24時間に合わせているのでしょうか。答えは、光です。私たちは朝、太陽の光を浴びることで体内時計を少し進ませ、調節しているのです。忙しいがゆえに生活リズムが乱れ、学力が伸び悩んでいる子どものためにまず簡単に出来ることは、1日の始めにカーテンを開けて朝日をきちんと浴びさせることです。曇りの日の少しの光でも、体を目覚めさせるには十分だと言われています。朝きちんと目覚めることで夜は早めに眠くなり、早寝早起きを定着させることができるでしょう。
また、現代には太陽の光以外にも様々な光が存在します。スマートフォンやテレビ、パソコン…夜でも私たちの部屋は明るく、たくさんの光にあふれています。多くの子どもが、スマートフォンやテレビ、ゲーム機などの最新の電子機器を使用しています。動画を見たりネットサーフィンをしたりすることも、彼らにとって当たり前となりつつあります。夜にそれらの光源を直接、長時間見ることによって、体内時計の調節がうまくできなくなり、寝る時間が遅くなってしまうことも、睡眠を阻んでいる要因の1つです。しかし、突然子どもから電子機器を取り上げるのも難しいでしょう。スマートフォンやゲーム機、パソコンを触ることが多い子どもに対しては、一気にやめさせるのではなく、1日の使用時間を決める、夜遅い時間には使わないなどの、ルールを作ってみるのもよいでしょう。少しでも電子機器の使用による疲れが減少すれば、質のよい睡眠がとれるようになり、学校での集中力も高まります。
早寝早起きや睡眠の質だけでなく、睡眠時間も学力と関係しているというデータがあります。ある実験では、睡眠時間が長い子どもは睡眠時間が短い子どもと比べて、脳の記憶を司る「海馬」という部分が大きいという結果が出ました。子どもは眠ることによって、脳内の神経ネットワークを形成して未成熟な脳機能を完成させたり、情報処理能力を高めたり維持したりすると言われています。つまり、成長期の睡眠時間は脳の発達に大きく関係するのです。
睡眠は、私たちの、特に子どもの健康にとってとても大事なものの1つです。もし学力が伸び悩んでいるお子様がいらっしゃるならば、勉強方法に加えて生活習慣の見直しや改善を図ってみましょう。そうすれば、より効率的に学習ができるようになるかもしれません。(文/学林舎編集部)
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