2019年教育の行き先 教育環境(部活動)をどう改善するか
2012年に大阪市立桜宮高等学校で、運動部顧問による部員への体罰により、生徒が自殺した事件が大きな社会問題となりました。これを受け、文部科学省は、「体罰禁止の徹底及び体罰に係る実態把握について」の依頼を各都道府県教育委員長等に発出し、体罰禁止の徹底に努めました。その後、体罰に頼らない指導の充実が図られるよう、「運動部活動での指導のガイドライン」が策定されました。しかし、教育現場での体罰が根絶されることはなく、2019年の4月から5月にかけて市立尼崎高等学校の運動部で、コーチを務める臨時講師が部員に体罰を加えていたことが発覚しました。教育現場での体罰は「子どもに対する指導の一環だ」という認識が今でも一部で残っているのが現状です。子どもの指導に、体罰は必要なのでしょうか。子どもにとって、保護者にとって、部活動とはどのような位置づけにあるのでしょうか。今回は、学校の部活動の在り方について考えていきます。
2017年度のスポーツ庁の調査によると、公立中学校全体の約30%が生徒に対し、「全員入部制」をとっており、これは、「ブラック部活動」の原因の1つになっていることが知られています。しかし、学習指導要領を見ると、部活動は次のように位置づけられています。
「生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化、科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等、学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること(一部抜粋)」
このことから、学校の部活動は、「子どもの主体性」を一番重要視していることがわかります。つまり、部活動は、学校に強制されるものではないことがわかります。子どもたち自らが選択できるものの1つであり、興味のあるスポーツや文化等に、誰でも気軽に触れることができる場所なのです。では、子どもたちが主体的な行動をとるために、何が必要なのでしょうか。ある学校の顧問教諭は、練習メニューを与えるのではなく、部員同士の話し合いによって決定させています。主体的な行動は、責任感や誇りを持つことができ、そして自分自身の存在感や相手を認めることに繋がります。
子どもたちの学校生活において、部活動とは、主体性を育てるための場所であり、自ら行動をしていくことの大切さを学ぶ場所だといえるのではないでしょうか。そして、部活動を通して、クラスや学年の壁を越えた仲間をつくり、切磋琢磨しながら、自分の能力や技能を生かしていくことができます。それは、達成感や充実感、心身の成長にも繋がります。保護者にとっても、子どもの成長を身近に感じることができるでしょう。
部活動は、子どもが主体的に取り組むからこそ、達成感を得、自身の成長を感じることができる場所だといえます。決して教員が体罰を加えて指導することで、それらを得ることはできません。冒頭で述べたような問題に際して、今一度、部活動の本来の在り方と指導について、指導者や周囲の大人それぞれが、また、子ども自身が考える必要があるのではないでしょうか。そして、子どもにとって部活動が成長の場となるように、主体的に取り組める環境づくりをしていかなければならないと考えます。(文/学林舎編集部)
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