2019年 学習の行き先 科目学習する意味を考える—算数編
算数と社会とのつながりを考えると、とても密接に結びついています。しかし、子どもたちは、なぜ算数の勉強が必要なのか理解できず、根本的な位置づけ、目的意識がないまま学習が進んでいるように感じます。算数は他の教科に比べると、嫌いになってしまう子どもが多く、一度できなくなると、そこから何年間も苦しい思いをすることがあるように感じます。
算数は1つの教科として、学ぶ理由があるからこそ学んでいます。今回は、なぜ算数を勉強するのかについて、いくつかの例を挙げて考えていきたいと思います。
○かけ算-学ぶ理由を考える
かけ算は、小学2年生で初めて学習します。たし算・ひき算・かけ算・わり算の4つの計算方法にはそれぞれに意味があり、どのようなときに利用できるのかを算数ではひとつひとつ学びます。
「箱にあめが4個ずつ入っています。この箱が5箱あると、あめは全部で何個あるでしょう。」
このような問題では、たし算しか知らない子どもたちは、4+4+4+4+4=20と一所懸命に計算するでしょう。しかし、「同じ数がいくつもあるときはかけ算を使えばよい」と習うと、4×5=20と計算できるようになります。このように、たし算ではわずらわしかった計算でも、かけ算を使うことによって簡単に求めたり、より大きい数まで計算を進めたりできるようになります。
○面積-学ぶ理由を考える
算数において面積というと、正方形や長方形、三角形などの公式をただ単に暗記するイメージがありますが、面積を求めることを学ぶと、数値化して判断する力が養われ、日常生活に生かすことができます。
例えば、キャンプに訪れて、テントを張る場所について隣の人と揉めたとしましょう。そこでけんかするのではなく、土地の面積を求めて均等に分けられたら、お互いが納得できそうですね。このように見た目ではわからないものでも、数値化することで広さの違いがはっきりわかります。
○割合を使った比べ方-学ぶ理由を考える
割合を学ぶことで、あることがらを、さまざまな視点から多角的にみることができます。
例えば、A遊園地とB遊園地の土曜日と日曜日の入園者数について調べたとします。A遊園地では、土曜日は500人で日曜日は700人でした。一方、B遊園地では土曜日は1000人で日曜日は1200人でした。どちらも日曜日の方が土曜日よりも200人多く入園しましたが、同じだけ増えたと言ってよいでしょうか。
日曜日の入園者数が土曜日の入園者数よりも何倍増えたかを考えると、A遊園地は1.4倍(140%)なのに対して、B遊園地は1.2倍(120%)です。「日曜日の方が土曜日よりも何倍増えたか」を考えると、入園者数は少ないですが、A遊園地の方が増え方が大きいことがわかります。
このように、差を使って比べることもできますし、割合(何倍か)を使って比べることもできます。どちらが間違っているということはなく、どちらを使う方がより便利か、わかりやすいかで使い分けています。社会では、割合を使って比べられることが多くあります。割合は、もとにする量が違っていても、同じように比べることができるからです。
もちろん算数はできなくても生きていけます。しかし、この3つの例のように、算数を身に付けることで、楽に計算できるようになったり、数値化して判断できるようになったり、物事を多角的にみることができるようになったりと、生活を豊かにしてくれます。算数は世界中の人たちが知っています。人によっては感じ方が違うこともありますが、算数を使うことで、みんなが同じ基準で客観的にものごとをとらえることができます。だからこそ、自分自身のためにも、これからの社会をよくしていくためにも、算数を学び、身に付ける必要があるのです。(文/学林舎編集部)
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