2019.09.20

2019年 学習の行き先 科目学習する意味を考える—理科編

 前回は、算数を学習する意味について考えました。今回は、理科を学習する意味について考えたいと思います。理科も算数と同様に、他の教科と比べると嫌いになる子供が多い科目で、「理科離れ」という言葉を耳にすることもあります。原子記号を覚えたり、浮力の大きさを求めたりすることに何の意味があるのだろう…と思いながら、理科を学習してきた人も少なくないでしょう。では、本当に理科は学習する意味がないのでしょうか。今回は、小中学校で学習した理科の内容が、社会や日常生活とどのように関係しているのかを考えてみましょう。
 理科は、問題を解決する能力を育成するために学習する教科です。小学校では、気づいたことを、比較し、関係付けながら調べることを指導目標としています。中学校では、小学校で身に付けたことを生かし、さらに分析しながら調べることを指導目標としています。このように、指導計画は小学校から中学校へと段階を踏んで学習する流れになっています。
 今、みなさんはこの記事をどのようにして読んでいるでしょうか?多くの人は、パソコンやスマートフォンといった電子機器を使って読んでいると思います。この電子機器は、誰がどのようにしてつくったのでしょうか。
 コンセントにプラグを差して電源ボタンを押すと電子機器は動きます。これは、日常生活において当たり前のこととされています。では、誰がこのような仕組みになるように考え、電子機器などを開発したのでしょうか。電子機器を開発するためには、電気について、いろいろなことを学習しなければなりません。これの基となるのが、小中学校で学習する理科の内容になります。
小学校では、乾電池と豆電球をつなぐと電流が+極から-極に流れ、豆電球にあかりがつくことを学習します。そして、中学校では、なぜ電流が流れるのかということを学習します。このように、理科では、学年が上がるにつれて、徐々に仕組みが理解できるように学習します。
 これは、電気の話に限りません。たとえば、人のからだについては、小学校では、食べた物がどういった経路を通って排出されるのかを学習します。そして、中学校では、経路だけではなく、食べた物がどのような形になってからだに吸収されるのかまで学習します。また、天体については、小学校では、太陽は東から出て西にしずむと学習します。そして、中学校では、太陽が動いているのではなく、地球が自転しているから太陽が動いているように見えるということを学習します。
 このような、小中学校での学習内容は、その後の高校での専門的な学習や、将来、社会に出て仕事をするための知識として役立ちます。
 文明機器の発達には、物理学や化学を学ぶことが欠かせません。また、医学の発達には生物学を、天文学や自然災害には地学を学ぶことが欠かせません。つまり、科学や医学の発達には理科を勉強することが必要となります。そして、科学や医学を発達させるためには、誰かがその仕事をしなければなりません。この誰かを、小中学校の時点で特定するのは非常に難しいので、小中学校では、いろいろな内容の学習をし、子供たちがいろいろなことに触れる機会をつくっているのです。
 もちろん、すべての分野において専門的な学習をする必要はありません。少しでも興味をもった内容があれば、将来を担う人材になれるように、それを専門的に学習してみてはどうでしょうか。(文/学林舎編集部)