2019年 学習の行き先 小学校教科書改訂―算数編
グローバル化や人工知能(AI)の活用などにより、今後、社会は大きく変化していくと考えられています。このような社会の変化を見据えて、学習指導要領の改訂が行われ、小学校では2020年から、新しい学習指導要領に応じて作成された教科書が使用されます。今回は、2020年から使用される小学校の算数の教科書とこれまでの教科書との違いを、これまで学習していた学年から移動する内容、データの活用、プログラミング教育の3つの観点から紹介します。
~これまで学習していた学年から移動する内容~
・分数の計算
「分数×整数」、「分数÷整数」の計算は5年生から6年生に移動します。これにより、5年生では分数のたし算とひき算のみを学習することになります。
・速さ
速さと時間から道のりを求める問題などを学習する「速さ」の単元は、6年生から5年生に移動します。ただし、分数のかけ算やわり算は6年生で学習するため、これまで速さの単元で学習していた、時間を分数で表して計算するような問題は、5年生で学習することはありません。
・データに関する用語
「代表値(中央値、最頻値)」は中学1年生から6年生に移動します。このあとのデータの活用で紹介しますが、より早い学年から、データを分析・考察するための指導が行われることになります。
・単位についての学習
これまで6年生で学習していた「メートル法」が3年生、4年生、5年生に移動します。3年生や4年生で新しい単位を学習するときに、単位の頭につく「k(キロ)」や「m(ミリ)」の意味についてもふれるようになります。また、4年生では、面積の単位とこれまでに学習した単位の関係について、5年生では、体積の単位とこれまでに学習した単位の関係について、考察するようになります。
~データの活用~
ビッグデータなどの技術革新により、今後ますますデータを適切に収集したり、分析したりする力が必要になってくると考えられます。今回の学習指導要領の改訂では、統計に関わる領域「データの活用」が新たに設けられ、統計的な内容が充実しました。これまで学習していた資料の整理や読み取りの内容に加えて、3年生で学習する棒グラフでは、1組と2組などのように複数の棒グラフを比較して考える問題や、4年生で学習する折れ線グラフでは、棒グラフと折れ線グラフを組み合わせたデータの読み取りを学習するなど、複数のグループのデータを比較するようになります。また、6年生ではドットプロット、代表値(中央値、最頻値)、階級など、中学1年生で学習していた内容が一部加わることになります。代表値(中央値、最頻値)の意味や求め方、目的に応じてデータを収集すること、統計を用いて問題を解決する方法などを学習します。
~プログラミング教育~
学習指導要領の改訂により、小学校では「プログラミング教育」が、算数だけでなく、国語や理科などいろいろな教科で必修化されます。「プログラミング教育」といっても、プログラミングする方法を学習することが目的ではありません。小学校では、「プログラミング的思考」を育むことに重点が置かれています。「プログラミング的思考」とは、コンピュータに意図した処理を行わせるために、どのような指示が必要か、どのように改善すれば意図した処理になるかを論理的に考えることです。例えば、5年生の円と正多角形の単元では、正多角形を作図する手順を論理的に考えることで、「プログラミング的思考」を育んでいきます。
また、これらの3つの点以外でも、全国学力・学習状況調査などで課題として挙げられていた割合に関する内容が充実しています。割合は主に5年生で学習しますが、4年生でも何倍かを表すのに小数を用いることや、簡単な場合についての割合を学習するようになります。
以上のような学習する内容の変更だけでなく、学習指導要領では、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)が重要であるとされ、評価の基準も変更されていることから、2020年からは教科書だけでなく、授業やテストなども変わると考えられます。(文/学林舎編集部)
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