○Cross Road 第98回 大学の運営にも経営力が必要 文/吉田 良治
京都最先端大学が企業経営の力を活用して、世界基準の大学運営を目指しています。日本電産の創業者でCEOの永守重信氏は、2018年京都学園大学理事長に就任され、私財100億円を提供し大学改革に乗り出しました。大学名も2019年から京都最先端大学に変わり、改革の目玉が2020年4月から設置予定の工学部です。授業はすべて英語で、国際感覚を兼ね備えた優秀なエンジニアの育成が柱になるとのこと。また、世界各国に支社を持つ日本電産でインターンシップも提供されます。日本では見学会・職場体験の延長が一般的なインターンシップも、海外の日本電産の支社で数か月間実務経験を積むことも可能とのこと。国際競争力が求められるビジネス界の空気に触れ仕事をする機会は、日本でそう多くありませんので、学生にとっても大変メリットの大きい内容と思われます。
2015年にPHP研究所から著書“日本の大学に入ると、なぜ人生を間違うのか・アメリカの成功者たちが大学時代に学んでいること”を刊行していただきました。著書内で取り上げた中に日本の大学の課題について詳しく取り上げました。
日本の大学の多くは国の補助金に依存して大学経営されています。実質大学版生活保護です。一方アメリカの大学では国や州からの公的な補助金より、外部からの寄付などを活用し、大学教育や研究・開発に活用されています。私がフットボールチームでアシスタントコーチをしたワシントン大学でも、マイクロソフトの共同創業者のビル・ゲイツやポール・アレンなどが、多額の寄付をして大学の運営を支援してきました。優秀な人材を輩出することや、地域の産業の基盤となる研究・開発の援助は、成功者からのサポートが不可欠です。また公的な資金を補助される場合も、明確な結果責任が求められます。ワシントン大学の場合州からの補助金1ドルに対し、ワシントン州に22倍の経済効果をもたらし、州内で3番目(ボーイング社、マイクロソフト社に次ぐ)の雇用を創造していますので、公的な資金を得た結果説明も果たせています。補助金が生活保護化されている日本の大学とはスタート(補助金を得ること)は同じでも、ゴール(結果責任)が全く違うのです。
AI時代に入る令和の時代、単に海外との競争だけでなく、人ができる仕事の質や新たな分野でのスキルの習得が重要になります。アメリカではIT人材が毎年年間10万人以上不足している、ということで、企業が積極的に教育機関と連携して人材育成に取り組んでいます。アマゾンのように夏のインターンシップに大学生を千人単位で雇用。月給も8,000ドルを支給して大学生に最先端のインターンシップを提供しています。実質新卒採用の前倒しになり、学生の抱え込みをすることが目的の日本のインターンシップとは大きな違いがあります。
グローバルな厳しい競争で培ったノウハウを如何に次世代に引き継ぐのか、企業や大学が私欲に目を奪われることなく、次世代の育成を地域や国、そして世界レベルの発展と平和に軸を持つ必要があります。(つづく)
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