2019.12.05

英語で算数を学ぶ-アメリカの算数教科書比較

 日本語で算数を学ぶことは、いうまでもありません。ですが、英語で算数を学ぶことはどうでしょう?
 毎日新聞の記事でアメリカ在住の日本の小学生がアメリカ式の算数と日本式の算数を学習していることが掲載されていました。その記事の中で注目したのは「計算のプロセス」がアメリカと日本では違うということです。具体的にいえば、私たち日本人は呪文を唱えるかのように「九九」を覚えます。「さざんがきゅう。さんしじゅうに」というように。アメリカでは日本のように「3の段を覚えましょう」といって「暗記させる」ということはありません。
 Houghton Mifflin Harcourt出版の小学算数の教科書を見ると、図や絵によるアプローチが多く、「3が3つで」「6」。「3が4つで」「12」……。というプロセスで計算をしていく方法がとられています。例えば「3かける5は」と質問されれば、子どもたちは「3、6、9、12、15。答えは15」というプロセスを通って答えをだします。つまり、15になるためにひとつひとつ足していくという考え方です。当然、日本の九九と比べるとスピードも遅いし、間違いも多いです。私たち日本人がこれを見ると「何でそんなやり方するの? 『さんごじゅうご』って覚えればいいじゃない」と。

 

アメリカの小学校算数教科書

 

アメリカの小学校算数教科書 アメリカの小学校算数教科書

 

 「さんごじゅうご」は単なる覚え方ですから、プロセスなどは必要ありません。便利で使いやすいものを考えるのが得意な日本人と、順を追ってしか身につかないと考えるアメリカ人とは、もともと大きな文化の違いがあります。九九ひとつとっても、アメリカと日本ではかなり違います。このような文化の違いをアメリカの教科書は気づかせてくれます。
 アメリカ人の教育関係者に聞くと「日本の九九のように計算パターンを覚え込むということはしません。でも、何度も同じような問題を学習することで、自然と頭の中に式と答えが入っていくんです。だから、いちいち足し算をしなくても『3×4』を見ただけで『12』という答えがだせるようになるんです。それと同時に、答えを早く導き出すために『3×9』などの計算は9回3を足していかなくても、『3×10』から1回だけ3を引けばいいという考え方を学習します。また、27は3を9回足すということが前提としてありますので、自然に割り算も理解できるのです。」
記事の中で「息子のように両方の覚え方をした者が一番得なのかもしれない。アメリカ式、日本式で算数を勉強している息子は、言葉だけでなく、算数も『バイリンガル』に育っていくのだろう。」
 この言葉にすべてが凝縮されているように、文化を理解することによって、ことばを身につけていくことが、ほんとうの意味で「使える英語」を獲得することになります。

Houghton Mifflin Harcourt出版のアメリカの教科書は、全米でカリフォルニア州を中心にアメリカの小・中・高等学校の約1/3が利用しています。アジアでは、韓国・台湾・上海・シンガポールなどで、インターナショナルスクール、バイリンガルスクール、進学塾(海外の高校・大学への進学指導)で活用されています。日本でも、インターナショナルスクールを中心に大学(東京大学・京都大学など)・大学院・大学図書館、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)で活用されています。(文/学林舎編集部)