未来を創る子どもたちへ-教育の再構築
インターネット、SNSの飛躍的な広がりによって家庭における生活は、情報を選択して消費する時代へと突き進んでいます。選択された情報、商品は、目に見えないカード決済を中心に数字が右から左へとながされていきます。つまり、お金さえも目に見えるものではなく、PC、スマートフォン上の文字入力に過ぎないということです。働くことによって得られる賃金もまた、口座から口座へと移動していくものでしかありません。家庭を支える父親の姿は、家族にさえ見えない状況です。家族を成り立たせるためには、経済とは別のところで関係をつくりあげねばならないという複雑さが生まれ始めています。このように家族の心の離散は、自分を求めて彷徨い始める家族を大量に生み出していっています。ここ数年「ひとり旅(自分探しの旅)」というキャッチコピーは、このことを何よりも表しているのではないでしょうか。しかし、いかにももっともらしいこのコピーは、有形のモノから無形のモノを手にしようとする消費行動をさらに促進させるモノでしかないことに気づくはずです。消費社会は一方で有形無形のモノをすべて商品化する生産者とそれらを消費しつづける消費者によって成り立っています。ここでは生産者、消費者でもありますが、生産者は、モノを創り出すというところでは、自らの独創的な力で生み出さねばならないから、消費行動によって支えられている自分では何の役にも立たないのです。その意味ではこの生産者は極めて原始的な消費者でしかないのです。
しかし、資本社会は彼らの力によってさらに膨大化し、消費者を投資家にまで仕立てあげています。生産者によってなされた生産は、ついに商品そのものではなく、見えないお金がお金を生み出すものとして形を変えていくのです。株式投資はそのことを何よりもよく表しているものです。お金がお金を生産するということです。つまりさらに高度な消費社会では、誰もが消費者で誰もが擬似的生産者=投資家であるという極めて納得づくの構図ができあがります。しかし、この構造を成り立たせるのは、擬似的な生産者である投資家ではなく、本来的なモノを創り出す生産者です。
私たちは、この19年間、20世紀型高度資本主義社会から消費社会へと見事な変貌を遂げた社会からさらに高度消費社会へ向かう中にいます。そして今、「教育」は、この「生産者」と「消費者」を大きくふりわけしようとしていると考えられます。私たち自身、このふるい分けの中に身を置いていると言えばおおげさになるでしょうか。私は、今このような社会の構造的変動の善し悪しを問題にしているのではありません。これによって生じる様々な矛盾と問題点は、今後さらにあらゆる視点から問われていかねばならないことです。
私がこのことを書いたのは、私たち教育に関わるものが、見据えなければならない現実を描くことと、そこから創り出される今後の教育の姿を浮かび上がらせたかったに過ぎません。未来を創る子どもたちのために、日本の教育は再構築しなければいけないのです。(文/学林舎 北岡 響)
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