2019年 社会の行き先 学歴について考える
「どうしてこんなにたくさんの教科を勉強しないといけないのだろう?」「好きな教科だけ勉強してはいけないのかな?」「数学の公式って、将来必要なの?」 こんなふうに思ったことはありますか。なんのために勉強するのか、なんのために大学に行くのか、わからなくなったことはありますか。そんなときに、「『学歴』をつけるためだよ」と言われたことはありますか。
『学歴』とは何でしょうか。辞書には、「学業に関する経歴」とあります。『学業』とは「勉強をすること。学校での勉強」です。つまり、『学歴』とは「自分はこれまでに、こういう学校でこんなことを勉強してきました」ということを示すものです。
では『学歴』は、どんなときに必要なのでしょうか。多くの人は学校を卒業すると、働き始めます。もし企業で働くなら、就職試験があり、そのときに提出する履歴書には、必ず学歴を記入するようになっています。大学に入り、卒業した、という『学歴』は、多くの場合、「この人は、この大学に入るために一生懸命に努力した」と解釈されます。勉強の過程で、思うように進まず、成績が上がらなかったり、行き詰まったりすることは必ずあります。そこから抜け出すために工夫したり、やり方を変えたりする必要が出てくるでしょう。その結果、無事に合格、卒業できたということが「仕事で困難に直面したときに、自分で考えて乗り越えることができる人」と判断する材料の1つになるのです。
就職するにあたって、『学歴』を持っていると有利なことは多くありますが、もちろん『学歴』のためにだけ勉強をするわけではありません。大切なのは『学歴』ではなく、『勉強すること』そのものです。いろいろな教科を勉強すればするほど、そしてその分野での勉強を深めれば深めるほど、自分が興味を持てるものに出合える可能性が広がるのです。
地理を勉強するとき、単に地名とそこで採れる野菜だけを覚えるのは楽しくないかもしれませんが、「どうしてそこでその野菜が採れるのだろう」と調べてみると、意外な理由が見つかって、そこに行ってみたくなるかもしれません。実際に行ってみると、その場所の気候や地形など、教科書からはわからないことが見えて、興味を持てるかもしれません。そのことが将来の職業につながる可能性も出てきます。
数学が苦手な子どもたちにとって、公式を覚えて使うだけでは楽しくないかもしれません。ですが、大人になって銀行にお金を預けるとき、利息がどのくらいになるのか、また将来、ローンを組むときに、金利がどれくらいになるのか、計算式のしくみがわかればすぐに計算ができます。普通預金の金利が0.001%、定期預金の金利が0.2%だったとして、100万円を1年預けると、いくらの利息がつくでしょう。はっきりと頭に思い浮かべることができれば、決断する手助けになります。
将来、料理人になりたいと思っている人は、毎日料理だけをしていればよいわけではありません。日本ではいろいろな野菜や魚を手に入れることができます。食材をおいしく食べるために、どんな調理をすればよいか、組み合わせる食材は何がよいか、といった栄養に関する知識が必要です。
いろいろな教科を勉強して興味のあることや知識が増えると、将来できることや、将来の職業の選択肢が増えるだけではなく、人生を豊かにすることにもつながります。どんな大学や企業に入りたいかではなく、「どんな人間になりたいか」ということを考えるときにも『学歴』は必要不可欠な要素の1つなのです。(文/学林舎編集部)
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