吉田松陰から学びの本質を探る
吉田松陰という歴史上の人物をみなさんご存じかと思います。江戸時代末期、ペリー来航後日本は文化的・社会的に混乱が続きました。西洋の文明を拒否しながらも、その科学技術に魅せられ日本の文化・教育の在り方を考え直す者が増えていきました。吉田松陰もその一人でした。吉田松陰は思想的には外国を倒せという立場でしたが、外国を倒すにはまず外国のことを知らなければならないと思い、アメリカへの密航を企てました。しかし密航はばれ、吉田松陰は野山の獄という牢屋(終身刑の牢屋)に入れられます。普通の人間ならば、絶望したでしょうが、彼は違いました。なんと牢屋の中で儒学の講義を始めたのです。みかねた囚人の一人が彼に「あんたほんとにいいこと言ってるよ。でも俺達が聞いて何になるんだ。俺達は終身刑の身だ。社会に出て役立てることはできないんだ。」松陰はこう答えました。「確かに我々は終身刑でもう一生外には出られません。しかし私はこう思うのです。いいか悪いかは別として何か物事を知って死ぬのと知らないで死ぬのでは違うと。」彼はしばらくして牢屋から出され、そして驚くべきことに松陰の講義を聴いた囚人たちもその後、何人かは牢屋から出されているのです。感謝する囚人に向かって彼は「私には権力もありません。私にはお金もありません。腕力もありません。だけど、学問があります。」そしてこういいきったのです。「信ずるは学問のみ。」
私たちは、彼の言葉から様々なことを学ぶことができます。学問というのは自由であり、志さえあればどこまでも突き詰めることができるものであるということを改めて実感できるでしょう。同時に、定まった枠に詰め込もうとする知識の切り売りの学習方法では、社会を生き抜く力は身につかないことを痛感せざるをえません。
吉田松陰がいう「信ずるは学問のみ。」という言葉は、学ぶことによって人は死ぬまで成長していく存在であり、学ぶことをやめた人間は、生きている証明である「内なる輝き」をなくしてしまうということを感じずには入られません。(文/学林舎 北岡)
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