「学ぶこと」について-未来を拓く子どもたちへのメッセージ
学ぶことによって何を獲得するのか!?
現在、小学生の子どもたちの多くが取り組んでいる「暗記型学習」(先生から伝えられたものを覚える、テストで確認する)において、子どもたちに期待されていることは、次の2つです。
・言葉やことがらの習得
ひらたくいえば、知識の習得です。辞典などにのっている言葉などを覚える学習といえます。
・手続きの習得
「分数の除法は、除数を逆数にして乗法になおしてから計算する」という操作処理方法-計算規則の習得などです。
終焉しつつある暗記型の学習指導
私も含めて40代になると、ほとんどの大人には、小・中学校で何を学習したかについては断片的な記憶しか残っていません。もしかしたらまったく忘れてしまっているかもしれない学習もあります。この事実は、誰もが実感していることではないでしょうか。こうなった理由は基本的に教える側に求められます。いままでの先生は、一種モノローグ的なかたちで、授業の目的を「知識の伝達」に設定してきました。本人が意識している、していないにかかわらずです。
日本における<知識>
「知識人」という言葉はこの数十年の間にいつのまにか消失してしまいましたが、子どもたちが通う学校では、今もなお「知識人」になるための習得をせまられているのではないでしょうか。
「知識人」が単なる「物知り」でしかないのに、「知識」がつくだけで付加価値をまとった人間として、私たちは見てきました。
「知識」とは「価値をもたない指示性を示すだけの概念」として規定していましたが、ある本の題名を見て、さらにそのことを痛感しました。
それは、ダニエル・ベルという人の書いた「THE IMPACT OF INTELLECTUAL SOCIETY」という本ですが、日本語の書名は「知識社会の衝撃」となっています。どうして訳者あるいは出版社はこんな題にしたのでしょうか。
実際この本の解説を書いている山崎正和氏は、きちんと「知的社会」という言葉を使っています。「知識」と「知的」では、まったくちがうイメージになります。
「知識」とは、辞典や教科書、参考書にのっている個別的な事実に過ぎないと、はっきりいうべきなのです。
「知識」から「知的」あるいは「知力」へ
ある話があります。小学生で、将棋・囲碁がものすごく強い少年がいました。ところが、その少年の学力が伸びなくて、先生が困っているといいます。
このエピソードで、学習における「知識」がどのような位置を占めているかが明確に示されています。
将棋・囲碁とは全知力を求めるゲームです。それをこなしている少年の知力はかなりのものと推察できます。
その少年が「勉強できない」と聞いて、あくまでも、推論にすぎませんが、その少年は自分の学習方法の誤りに気づいていないのだと思います。また、先生が学習を「知識」に集約されるものだと考えることによって、その少年の<学力>が伸びないのだと思います。
「知識なんか、後からついてくる」といえます。この「INTELLECTUAL」と「知識」は同一でないといえば、知識重視の方々からひんしゅくをかうでしょうか。
従来型の学習指導方法は、「すべて知識習得から始まる」につきます。だがそれは根本的にちがうのではないでしょうか。「知識」は使うものによって初めて生まれるのであって、それ自体の中に価値が生まれようがないと思います。しかし、「知力」はちがいます。個がもつパワーそのものなのです。
「生き生きとする」ということ
世界の突き抜けた学者や企業家は誰も単なる「知識」のある人間になろうと思っていません。
また、「知識」だけの研究者や人材を求めていません。知力をもつ魅力的な人間になろうとし、そんな人材を必要としているのです。
これから未来を切り拓く子どもたちに必要なのは、「知識は暗記するもの」という考えをすっぱり洗い落とし、知識装備型ではない知力創造型となることではないでしょうか。それでこそ、「おもしろい」「元気が出る」生き方ができるのではないでしょうか。(文/学林舎 北岡)
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