2020年 学習の行き先 読解力低下に関して
近年、子どもたちの読解力の低下が話題となっています。このことが話題となりだしたのは、経済協力開発機構(OECD)が行っている国際学習到達度調査(PISA)の読解力のテストにおいて、日本の平均点の順位が、2012年実施の4位から、2015年実施の8位と順位を落としたことがきっかけになっていると言われています。その後の2018年実施の結果は15位とさらに大きく順位を下げており、日本の子どもたちの読解力は低下し続けているのでは、と危惧されています。
PISAとは、3年に1度、義務教育修了段階の子どもたちを対象に行われる、『読解力』、『数学的リテラシー』、『科学的リテラシー』をはかるテストで、2018年実施については、日本では約6000人の高校1年生がテストを受けました。日本は、『数学的リテラシー』は6位、『科学的リテラシー』は5位(ともに2018年実施)と上位であるにも関わらず、『読解力』では順位を大きく下げることになりました。また得点を見ても、2018年実施の『読解力』の日本の平均点は504点で、前回の2015年実施より12点、前々回の2012年実施より34点低くなっています。
文科省によると、自由記述式の問題の得点が特に低く、正答率がOECDの平均を2割近く下回った問題もあったとようです。文科省担当者は「自分の考えを他者に伝わるよう、根拠を示して説明することに課題がある。」と分析しています。
では、PISAがはかろうとしている読解力とは、どのようなものなのでしょうか。
PISAのテストはコンピュータを通じて行われており、ブログなどの資料を読みながら問いに答えていく、という形式をとっています。その出題内容を見ると、日本の国語教育で伝統的に行われている、心情の読み取りなどの力だけではなく、別の力も必要になることがわかります。その「別の力」については、PISAは次のように定義づけています。
『自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力』
つまり、与えられた文章を読み進めて理解するだけではなく、対話的・批判的に読み取り、利用する力が求められているのです。このことは、今日のデジタルの世界で、本当かうそか判断がつかない情報の海を進んでいくのに必要な力だと考えられています。そのような姿勢は、実際に出題された問題からもうかがい知ることができます。
『三つの資料を読んで、あなたはラパヌイ島の大木が消滅した原因は何だと思いますか。資料から根拠となる情報を挙げて、あなたの答えを説明してください。』(2018年実施問題より)
つまり、1つの連続したテキストではなく、いくつかの資料(ブログや書評、ニュースなど)を読んだ上で、それぞれの情報を判断し、対比し、考察しながら自分の答えをまとめ、伝える力が必要となるのです。
このような力を養うためには、今まで読解力を高めるものとして妄信的に語られてきた「本を読むこと」だけではなく、いくつかの文書の内容を正しく理解した上で、自分がどのように考えるのかを、その根拠を明確に示し説明することを普段から意識、訓練する必要があると考えられます。(文/学林舎編集部)
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