2020.01.17

2020年 学習の行き先 記述問題の位置づけ

 大学入試センター試験(以下、センター試験)が2020年1月の実施を最後に終了し、後継の大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が2021年1月から始まります。制度変更の目玉であった英語の民間試験の利用と国語・数学での記述式試験の導入は、実施への不安の声の高まりを受けて、延期が決定しました。記述式採用への経緯や、延期決定までに挙がった問題点を解説します。
 共通一次試験にかわって、1990年にセンター試験が始まりました。共通一次は国公立大学の受験生のための試験で、一律5教科を受験しなければなりませんでした。センター試験では各大学が自由に教科を指定する方式へと変更され、私立大学も利用できるようになりました。私立大学はセンター試験を利用することで入試方式を多様化させ、受験機会が増えました。
 センター試験から共通テストへの変更は、高大接続改革の3本柱の1つで、

・知識・技能
・思考力・判断力・表現力等
・主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度

という学力の3要素をはかることがねらいとされています。マークシート方式のセンター試験では思考力や表現力を十分に測れないため、共通テストでは国語と数学で記述式問題が出題されることになりました。受験者数が多い私立大学では独自試験で記述式を行うことは困難なため、共通テストへの移行を歓迎する大学もありました。
 国語の記述式は、最も長いもので80~120字程度の文章を書く問題など、計3問が出題されます。(試行調査時は、「20~30字程度」「40~50字程度」「80~120字程度」の3問。)マーク式の配点(200点満点)とは別に、A~Eの5段階で評価されます。数学では、数式などを書く問題が3問出題され、マーク式と合わせて100点満点となる予定でした。
 共通テストの実施団体である大学入試センターは、2018、2019年度に試行調査を行いました。国語で採点基準の確定が遅れたために結果を修正したり、自己採点と実際の点数が一致しなかった生徒が3割に上ったりするなど、採点の質や自己採点とのずれなどが課題として挙がりました。
 採点への不安は、文科省の有識者会議で記述式の検討を始めた当初から挙がっていました。「実施をセンター試験よりも1か月早める」、「各大学が採点することで負担を分散させる」などの案も出されましたが、いずれも反対の声が強く、抜本的な対策は講じられてきませんでした。
 延期された記述式と英語の民間試験利用について、文科省は検討会を設け、2020年中に提言をまとめることを決定しました。受験生が安心して受験できる入試のあり方が問われています。 (文/学林舎編集部)