○Cross Road 第101回 オリンピックイヤー 文/吉田 良治
2020年の今年、最も注目されるのは東京で開催されるオリンピック・パラリンピックです。今回は1964年大会以来二度目の東京開催となります。招致が決まった後新国立競技場建設をはじめとした、競技会場の建設費問題が取沙汰されました。そして大会終了後のレガシーの問題もまだまだ不透明な中、メダルの数の皮算用だけが先行しています。昨年には国の借金・赤字国債が1,100兆円を超えたニュースがありました。この赤字国債は前回東京オリンピックの翌年1965年から始まりました。そして54年積もり積もった額が1,100兆円となったのです。今回の東京五輪・パラリンピックが国の借金2,000兆円へのきっかけになるのか、それとも国の借金を軽減していく一歩となるのか、大会後の課題は山積ではありますが、開幕まで7か月となった今はまずこの大会を成功させ、そのあとのこともしっかり見据えて堅実に取り組んでいくことが求められます。
オリンピック関連以外にもスポーツ界全体でいろいろな課題も山積しています。スポーツ界全体で改革を進めることは中々難しいものが多いので、競技団体ごと、そしてチーム、さらにスポーツに関わる個人個人で取り組むべき問題もあろうかと思います。
2年前に発生した日本大学アメリカンフットボール部タックル問題を受け、日本アメリカンフットボール協会(JAFA)ではフェアプレイを推進する取り組みが続いています。現在全国各地でシンポジウムを開催中で、今年度中にはすべての地区での開催を終える予定です。このシンポジウムではフェアプレイはもちろん、各地域ごとに抱えている課題の共有をしながら、建設的な意見交換を行っています。特に地方のチームでは選手だけで活動しているケースが多く、コーチが関わる機会が少ない、といった課題もあります。これはこの競技の特性上(体が激突する)、選手だけでの活動には重大事故を防ぐための安全面の確保が難しくなります。フェアプレイの推進と同時に安全対策が重要な競技として、適切な運営のサポートも必要となります。
JAFAでは各地域でいただいた課題を取りまとめ、具体的な改善策やサポート体制を確立につなげる議論も行っています。私はこのシンポジウムを運営するJAFAフェアプレイワーキンググループに参加し、スポーツマンシップの理解を深め、実践で取り組めるための仕組みづくりや、安全な運営とコーチングの講習会の開催などで協力しています。
今月、プロ野球機構が昨年秋に実施した若手選手のセカンドキャリアのアンケート調査の結果発表がありました。若手選手の半数近くが引退後の生活に不安を抱え、その多くは具体的に引退後の対策や準備ができていないことが指摘されています。これまで引退後野球指導者を目指したい、という希望が多くあったのが、昨年は一般企業の会社員が最も多くなり、今年は起業や経営者になりたい、という希望が一番多くなりました。競技引退に備えるための具体的な対策、そしてそのサポート体制の必要性は以前から指摘されてきたことですが、中々進んでいない現実があります。スポーツで成功できるものはごくわずかです。そして活躍できる期間も短く、競技引退後の人生が長く残っているという現実を踏まえ、選手、そしてスポーツ団体は具体的な対策が求められます。バットも持ったことのない者がプロ野球のドラフトで指名されないように、未経験で元アスリートが一般の職業にすぐ適応できません。アスリートのセカンドキャリアもオリンピックレガシーとしてしっかり整備していく必要があります。(つづく)
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