表現力を育てる-求められる学力
表現力を育てる一歩として「目の前にいない第三者が理解できる文を書く=書き言葉」が必要ではないでしょうか。これが表現力を育てるための始まりといえます。第三者が理解するためには、第三者と共有する言葉を使わなければなりません。
ここ数年でSNSの普及が拡大し、SNSで使われているほとんどの言葉が会話文(話し言葉)です。話し言葉は、時と場を共にしており、すぐ目の前で向かい合っていたり、同じ体験をしたものにのみ成り立つやりとりです。それが書き言葉として第三者に通用するような錯角を抱いている子どもたちが多いです。場面の状況説明もなく、文脈もなく、一人楽しんでいる言葉の羅列は大人の世界でもよくあることです。
次に大事なことは、「聞く」「見る」をできるだけ正確に把握する習慣を身に付けることです。これは、話し合いの時や先生の話は、メモする習慣をつければかなりの要約力を培うことができます。観察日記などを付けることも身の回りの自然の営みをよく見る習慣がつき、観察力を培うこともできます。
また、できるだけ多くの言葉や出会いを経験させるために、図書にふれる環境を作ることも大切です。
最後に一番大切なことは、振り返りです。これは、学習においても、日常生活においても自分と他者や自然、モノとの出会いを自分の経験として生かすための最も大切なことなのです。日記を書くという行為であってもよいし、1日の中でゆっくりと自分を振り返る静かな時間を子どもたちにあたえることでもよいのではないでしょうか。
子どもたちの1日を考えてみましょう。朝の7時に起きて、8時半までに学校に行く。学校に行けば、40分ごとの各教科の授業があります。授業が終わって家に帰ると、習い事があります。さらに習い事に行く子どももいるでしょう。夕食をすまし、お風呂に入るとどんなに早くても8時になっています。1時間テレビをみればもう寝る時間です。子どもたちは、ほぼ1日中大人の視線で管理されています。昔だと、学校の帰り道や帰宅した後の時間は、大人とは別の子どもたち自身の時間をたっぷりともっていたものですが、今や子どもたちは、四六時中、大人に監視されています。誰の視線も感じることなく、自分の時間を楽しむということを持たないと、大人であっても自分を見失っていきます。そういった中、子どもたちの表現力を育てるにはどうしたらいいのでしょうか。
例えば、次のようなカリキュラムの構成でおこなってみてはどうでしょうか。
1.表現基礎トレーニング 週1回 1時間 成長する思考力GTシリーズ国語などのような「書き言葉を学習」「要約の書き方を学習」を目的とした教材を使用
2.テーマ別研究 週1回 1~2時間 土曜日などに行い、読書、調べ学習などできるだけ、子どもたちが好きな学びを好きなだけできるようにする。テーマ別研究の後 学んだこと、わからなかったこと、反省すべきことなどをノートに書く。
3.研究発表 3ヶ月に1回程度 研究会議をおこない、研究内容を共有する。
大切なのは、学習者である子どもを孤立化させないことです。特に小学校低学年の子どもなどは、学習していることに対して親に見てほしい、先生に見てほしい、つまり大人に評価してほしいという気持ちが強いです。そのことによって、学習意欲を向上させることも多いです。小学校低学年のみならず、中学生、高校生、大人もそうかもしれません。共有することによって、学習=学ぶ意欲は上がっていくのではないでしょうか。(文/学林舎 北岡)
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