2020.02.14

デジタル機器とのバランスを考える

デジタル機器との バランスを考える

 

 2019年の調査では、児童生徒のスマートフォン・携帯電話保有率が、小学生が約45%、中学生が約80%、高校生が100%近くになり、多くの児童生徒が使用するようになりました。さらに政府は、全国の小中学校でパソコンかタブレット端末の1人1台の利用を促進するため、無償で配置する方針を固めています。デジタル機器は、知りたい情報がその場で手に入る便利さと、情報が文字だけでなく、図や写真、アニメーションのように視覚的にも把握しやすいことから、今後教育現場に深く浸透していくものと考えられます。
 実際に、電子書籍を利用する16〜19歳の割合が、2018年の調査では3割以上になっています。持ち運びなどを考えると、漫画等の連載物は、スマートフォンやタブレット端末を利用した方が楽であり、利用する人数が今後も増えていくことが予想されます。このように、電子書籍に代表されるデジタル機器は、着実に児童生徒に浸透しつつあります。

デジタル機器との バランスを考える

 

 その一方で、学校で保健指導を行っている養護教諭の約95%は、児童生徒がデジタル機器に依存していると実感しているとの報告が、2019年の目の健康を取り巻く環境についてのアンケート調査で明らかになりました。小学生では約71%、中学生では約94%、高校生では約98%と、児童生徒の年齢が上がるにつれて、デジタル機器に依存していると実感する養護教諭が多くなっている傾向にあります。依存による悪影響では、睡眠時間の減少や視力悪化、SNSでのトラブルといった問題点が挙げられています。デジタル機器の普及に伴い、デジタルネイティブと呼ばれる、生まれたときからインターネットが空気や水のように、あたりまえの環境として存在している世代の小中高生のデジタル機器依存率がさらに上がり、健康に悪影響を及ぼす懸念をもつ大人は増えています。

 その中で、児童生徒のネット依存への対策を進め始めた自治体もあります。
 香川県議会では、児童生徒のインターネットやゲーム依存を防ぐため、「ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)」制定に向けた協議を進めています。従来であれば、各家庭でルールを決め、使用する時間などを制限するものですが、スマートフォンなどでネットやゲームを利用する時間は増加傾向にあるとして、条例制定に踏み切り、早ければ2020年4月の施行を目指しています。
 このような香川県議会の動きに対して、一律に利用を制限するような考えは再考すべきだ、という意見もあります。批判的な意見として、「家庭への介入」「数字の根拠(1日60分、休みの日90分に制限)が不明」といったものが挙げられます。

デジタル機器との バランスを考える

 

 

 しかし、大切なことは、ネット依存の傾向がある児童生徒を守ることです。特に「ゲーム障害」は2019年、世界保健機関(WHO)から疾病と認定されています。現在、病的なネット依存が疑われる中高生は推計93万人と言われています。韓国ではゲームのやり過ぎによる死亡事故も起きています。
 デジタル機器はとても便利な道具です。重い辞書を持ち運ばなくてすむ、教科書が1つに収められ動画でも確認できる、調べたいことがその場で調べられるなどの使い方は、学習にプラスにはたらきます。そのプラス面と節度ある利用方法を、児童生徒とそのまわりの大人が真剣に話し合っていくことが、今必要とされています。(文/学林舎編集部)