○Cross Road 第103回 新型コロナウィルス・新型肺炎 文/吉田 良治
年明けより新型コロナウィルス・新型肺炎の感染が拡大し、政府からイベント自粛や公立の小・中・高校へ休校の要請があり、様々なところで自粛が続いています。グローバル社会の中で国を超えて人や物が行き来する時代、他国で発生した感染症を防ぐことは大変困難なことです。今年は東京五輪・パラリンピックが行われる年ですが、国内はもちろん海外のスポーツ界では、感染拡大の影響を受け、観客からのクラスター感染を防止するため試合を無観客で対応するケースもありましたが、選手や運営者から感染者が出るなど、公式戦が中止や中断するに至っています。東京五輪・パラリンピックにつながる各競技の予選も中断している中、オリンピックの開催も危ぶまれています。
大学は2月から春休みになっているので大きな影響はありませんが、高校以下の教育機関では休校により授業が受けれなくなりました。小学校高学年以上になると、子どもが一人で過ごすことも可能かもしれませんが、小学校低学年以下になると、共働きや父子・母子家庭では子どもだけで過ごすことに不安が出ています。通常であれば授業後の放課後に学童保育で対応していましたが、急に一日中学童で対応するとなると、現場に大きな負担がかかってきます。また通常授業よりも多くの児童が学童保育に集まると、クラスター感染のリスクが高まります。これでは休校にしている意味も薄れます。親が仕事を休んで子供と過ごすとなると仕事が滞ったり、またフリーランスで働いている方になると、収入減につながり仕事を休めないなど、家庭への負担も多くのしかかります。
アメリカでは法律で子どもが一人でいることが親の罪となり、法律で罰せられます。それが家の中であっても子どもが一人でいることは違法行為となります。ですので長期の休みになると、共働きであっても親が交代でやりくりをする、場合によっては子どもを持つ複数の家庭が協力して、子供を一人で過ごさせない、という対応をしています。
新型コロナウィルス・新型肺炎の感染拡大が深刻なイタリアも教育機関で休校になっています。ミラノにあるアレッサンドロ・ヴォルタ高校のドメニコ・スキラーチェ校長がペスト時代の教訓をもとに、休校に際し生徒へ送ったメッセージが話題になっています。その中で、“冷静さを保ち、集団のパニックに巻き込まれないこと。そして予防策を講じつつ、いつもの生活を続けて下さい。せっかくの休みですから、散歩したり、良質な本を読んでください。”という文章がありました。スキラーチェ校長は最後に“合理的な思考で私たちが持つ貴重な財産である人間性と社会とを守っていきましょう。”という言葉で締めくくっています。日本でも多くの学校で休校になっています。突然の休校で混乱している生徒たちも少なくないでしょう。こんな時は、合理的な思考を育み貴重な財産である人間性を備えるために、最も有効な手段は良質な本をたくさん読むことです。
近年日本の大学生の読書量が少ないとの傾向が出ています。毎年大学生の生活実態を調査している全国大学生活協同組合連合会によると、2019年の大学生の読書量0時間が48.1%で、2018年とほぼ変わらない数字が出ています。
アメリカの大学では電話帳のような分厚い専門書を年間で4~500冊ほど読破していくことが求められます。近年日本の大学の世界的な評価が下がっていますが、日本の大学の教育力だけでなく、学生の質の低下も危惧されています。せっかく学校が長期の休校になったことを前向きにとらえ、適度な運動をしながらゆっくり時間をかけて読書をしてみてはいかがでしょうか。(つづく)
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